干潟のつぶやき過去の履歴
2008.06.10掲載
◎海苔の需要拡大にあの手この手

海苔の消費量が少なくなっている。
10年ほど前までは、100億枚の生産と消費枚数があると言われていたが、生産者の顔の見える農水産物が消費者の人気を得て売れるようになって以来、海苔の消費が減少し始めている。と同時に、入札価格が安くなり、海苔養殖漁業者は採算が合わなくなり廃業する漁家が増えている。漁連調査による漁家数は平成8年度の9,017軒から平成18年度は6,242軒と約10年間で2,775軒(30%)の海苔漁家が減少している。毎年減少が続いており、次の漁期(10月)までには、6,000軒を割り込むのではないかと心配する声もある。

 生産団体では、何とかして海苔の消費を増やし、産地価格が少しでも高くなるようにしたいと、
「海苔の日」を制定して年一度の消費拡大を図ってきた。それでも間に合わないと、今度は、毎月第三土曜日を「手巻き寿司の日」として、毎月消費促進を図るようにした。

どの程度の効果があるのか、今後に期待する他ないが、かつて、「1日海苔2枚を食べましょう」と呼びかけた時期があった。最近はその声も聞こえなくなったが、ちなみに、焼海苔1枚(3グラム)の成分は、水分・0.2g、たんぱく質・1.2g、脂質・0.1g、糖質・1.3g、繊維・0.1g、灰分・0.2g、カルシウム・12mg、リン・18mg、鉄・0.4mg、ナトリウム・4mg、カリウム・72mg、ビタミンA効力・390IU、ビタミンB1・0.03mg、ビタミンB2・0.10mg、ナイアシン・0.3mg、ビタミンC・2.9mgなどの成分を含んでいる(平成2年刊、女子栄養大学出版部発行「栄養データブック」より)。
 2枚と言えば、単純に2倍である。他の海藻類より成分含有量は多い。
健康には良いはずであるが、いまの食生活には合わないのか。何か良いPRの方法はないものか。
(治)
2008.05.27掲載
◎全国86億枚で、海苔生産終る

 4月末で全国の海苔生産が終った。
全国の入札会で販売された海苔の枚数は
約86億2,831万枚であった。
昨年より9億3,949万枚少なかった。昨年10月の海苔種付け時期の水温が高く例年に比べて約2週間種付けを遅らせたが、生育時期の水温が海苔の生長に適していたため、順調に育った。

ところが、瀬戸内海地区は、海中の栄養分を大量に吸収する珪藻プランクトンが増えて、海苔の生育が十分ではなく、生産数量も少なかった。さらに、3月後半には、生産の最盛期を迎える兵庫県の主産地明石海峡で貨物船の衝突事故による沈没船から大量の燃料オイルが流れ出し、神戸市から東二見と
対岸の淡路島に至る広い海苔漁場で海苔網を引揚げ、生産不能になる事態が発生した。
この結果、瀬戸内海地区の海苔生産枚数は、昨年の54%に減少した。これが、今年度海苔生産枚数の大きな減少につながった。

この3年ほど前から、瀬戸内海の海苔生産状態が思わしくないようだ。珪藻プランクトンの発生が早く、赤潮状態にならないが海苔の生育に必要な栄養分を吸収してしまい、黒い海苔の生産が少なく、安い海苔になってしまうので、生産を早めに終らざるを得ない状態が続いている。瀬戸内海の海苔養殖が
安心して行える海況になるにはどうすればよいのか、十分研究する必要があるようだ。(治)
2007.12.14掲載
◎来年の恵方は「南南東」です

全国で新海苔の生産が始まった。
今年の出来具合は、ほぼ平年並みで推移しているようだ。
暑さ続きで、全国的に海苔養殖はやや出遅れたが、急速な寒気の訪れで、水温もほぼ適温になり、

海苔芽の育ちも順調で、昨年より出来の良いスタート
になっている。
ただ、西日本地区は雨量が少なく、海苔に必要な海水中の栄養塩(主に窒素量)が何時まで維持できるのか、やや心配のようである。しかし、今生産されている海苔は、「色良く、味良し」といったものが多いようだ。

 ところで、海苔の需要に眼を向けると、かつてのような家庭需要は少なくなっている。海苔業界では、
2月3日の節分に「恵方に向かって巻すしの丸かぶりをして、新年の幸運を呼び込みましょう」と、家庭需要の増加を呼びかけている。昨今は、すし屋さんもコンビニエンス・ストアも
「恵方巻」を売り出して、家庭でのイベントとして楽しんでもらおうという売り方をしている。

 海苔の業界にとっては、ありがたい需要喚起である。しかし、こうした需要喚起にも関わらず、年間を通した家庭での需要が今一つ伸びない。農家も米食の普及が今一つで、ごはん食の普及に力を入れている。「ごはんと海苔」は和食の定番である。海苔は、野菜や魚のような副食の惣菜ではなく、副惣菜の存在である。包む、焼く、巻く、振りかける、煮る、揚げる−と料理の素材としては多様性を持っている。健康に必要な微量成分は多く含まれている。そこのところをもう少し理解して貰い、食生活に潤いを持たせて欲しい−というのも海苔業界の願いである。

 来年の恵方は「南南東」である。海苔業界も需要拡大の願いを込めて「恵方巻の丸かぶり」で、業界の幸運を願わなければならないようだ。(治)
2007.10.27掲載
◎いよいよ新海苔のシーズン

 いよいよ新海苔のシーズンに入った。
いつまでも暖かい日が続き、特に九州・有明海では、海苔採苗(種付け)が遅れ、例年に比べて
2週間遅れの11月下旬になって新海苔摘みが始まった。今年はいつまでも水温が下がらず、
海苔の成育に都合の良い水温・24℃以下になるのを待って、10月中旬に採苗を始めた。

 有明海も200年の大不作以来、なんとか平常の海苔養殖が続いているが、内心には大きな不安を抱えている。高水温が続くのも地球の温暖化の所為だろうと言いながらも、諫早干拓以後の海流の鈍化への疑念も脳裏にある。赤潮は大きくならないまでも一年中続いている。海苔養殖漁場の一部は、諫早湾の干拓以来、有明海の中で最も早く色落ちする海域になっている。

 先日、諫早湾干拓が終わり、現場で完成祝賀会が行われた。「動き出したら止められない」のが政治事業である。干拓された農地がいつまで使えるのか疑念を持つ関係者も多い。閉め切り堤防は国土交通省に移管され、島原への近道になりそうである。やがて、観光バスも通るだろう。「いま走っている道が、あの有名なギロチン道路でございます」と、うぐいす嬢の観光案内も聞かれるのではなかろうかと
思うと、海苔に携わるものとして、複雑である。

 それにしても、今年も海苔は育っている。古代から大きな環境の変化にもめげず育ってきた植物で
ある。しかし、その本音を聞いて見たい気もする。(治)
2007.10.23掲載
◎暑くて海苔養殖作業遅れる

10月の初めまで暑い日が続き、残暑というより「何時まで夏が続くんだ」といった状態で、海の水の温度も一向に下がらず、海苔の種付け作業が全国的に1週間近く遅れている。

日本最大の海苔産地・有明海一帯も、日照り続きで10月上旬まで暑い日が続いた。そのため、海水温が下がらず、有明海の水温は
平年値を2℃以上も上回る状態が続いている。

人間にとっても、気温が2℃も上がると体感温度はそれ以上に感じるから、海苔にとっても、暑すぎて
体調がおかしくなるのは当然である。
したがって、海苔の気持ちが少しでも分かる海苔漁家は、水温が下がるのを待って海苔の種付けを始めようと、今年は、例年より15日から19日も遅い、
10月25日から27日に掛けて、海に海苔網を張り込み種付けの作業に入ることにしている。
例年であれば、海苔摘みが始まる直前である。そのため、年内に生産される秋芽の生産数量が昨年
よりやや少なくなるのではないかと見られている。
しかし、これまでの生産数量が多かったため、海苔業者の間には、在庫も多く、市中の海苔小売価格に影響することはないようだ。

この10月から、食品の値上げが始まっているが、海苔については、そのようなことはなそうである。
海苔の全国平均価格は、年毎に安くなる傾向が続いている。海苔養殖漁業者にとっては、寒い冬の
海での仕事にもかかわらず、値段が上がらないのは、つらいことである。
ある海苔業者が「海苔は物価の優等生だ」と言ったのを聞いたが、生産者の立場からいうと
「優等生であることより、当たり前の生徒で良いんだ」ということである。(治)
2007.10.15掲載
◎高水温に悩む「海苔種付け」

この数年、海水温が次第に高くなっており、海苔の種付けが遅れがちになっている。

通常、海上での海苔の種付けや育苗に適した海水温は
24℃以下といわれる。10年位前までは、10月1になると全国的に24℃以下になって、安定して海水温が低くなる傾向が見られ、東北地区では、9月下旬から海苔の種付けが始まっていた。
ところが、近年は10月初旬になっても24℃以下になることが少なく、10月上旬の後半(7〜9日頃)に海上での種付けや陸上で種付けして冷蔵保存していた海苔網を張り込む傾向になっている。

今年も、どうやら水温の低下が遅くなる見通しで、東北地区を除いては、
10月中旬の前半
(10〜13日頃)
になりそうな状態である。
種網を張り込むためには、出来れば大潮から小潮に向かう時期が良いようだ。
したがって、海水温の下がり具合と潮時を考えながらの張り込みになるから、一番頭を悩ませる時期
である。
九州の有明海では、9月下旬でも26℃〜27℃近い水温が続いている。
平年に比べると
3℃以上高い。
有明海は、ほとんど野外採苗といって、海苔網に海苔の種が潜り込んだ、かき殻をビニール袋に
2〜3個入れて30枚重ねた海苔網に吊るし、海上に張り込んで種を付ける方法を行っている。

それだけに、海水温の推移が多いに気になるところで、とりあえず、10月11日以降に採苗を行う考えであるが、果たして、その頃までに水温が下がるかどうか、潮時のタイミングを考えながら、気を揉んでいる状態だ。海苔作りの難しさを痛感する。(治)
2007.09.12掲載
◎有明海では新海苔養殖の準備始まる

九州・有明海では、10月中旬から始まる新海苔の採苗(種付け)に備えて、
干潟の漁場に海苔網を張り込む支柱を建て込む作業が始まった。
9月1日から漁場への支柱建て込みが解禁されたが、干潮時を避けての建て込みになる場合が多いからから、午前中や夕方の日差しの弱い時間を見計らっての作業になることが多くなる。
(同様記事は2006年9月12日付けこの欄に掲載)

9月下旬までには大方の漁業者は支柱の立て込みを終えそうである。10月に入ると中旬までには海苔網を張り込み、新海苔の種付けが始まるが、その時期の海水温が問題で、通常23℃以下が良いが、このところの温暖化で、この温度までに下がるのが遅れている。9月10日現在の有明海の水温は、平均で27.5℃相当である。朝晩は少し涼しくなっているが、あと一月程度だが、5℃相当下がってくるのかどうか、漁業者は不安顔である。

毎年の気象海況に大きく影響される天産物だけに、ベテランの海苔師が

「海苔作りは、毎年1年生たい」
という言葉に重みを感じる。
さて、今年も味の良い海苔が生計を維持できるように採れるかどうか、あとひと月が勝負どころである。
(治)
2007.08.17掲載
◎海苔需要促進に悩む海苔業界


平成18年度(平成18年10月〜19年4月まで)の全国海苔入札で海苔商社に買い付けられた海苔の枚数は約95億枚
しかし、全国の海苔業者が昨年から抱えている在庫海苔は、約40億枚とも言われているから、今年の買い付け分を含めると、約135億枚に達する計算になる。

この内、1年間に消費される海苔の枚数は約85億枚程度と見られている。さらに、次年度に生産されるまでに保存される必要在庫枚数は25億枚程度と見られているから、25億枚程度が生産過剰と言うことになる。
という数字を流通業界のいろいろな業者から聞く。「もっと多いだろう」という業者もいる。これらの数字は、非常に漠然としているが、流通業者が同業者間の話から生まれ出る数字で、信用できない数字として否定することも出来ないものがある。

いま、一般的には、「海苔の消費量は100億枚相当」といわれているが、業者の販売状況から見て
(主に業者の在庫数量から類推して)85億枚程度が実数に近いような実感を感じさせる。
それほど、消費数量が少なくなっているのが現実ではなかろうかと感じている。なぜか?。という業界の市場調査は行われていない。販売量が少なくなり、在庫が増えたからという理由で、海苔産地の入札価格は年毎に低下している。

生産者は、毎年減少している。高齢化で後継者も育てられず自然現象している部分もあるが、海苔養殖漁業の将来に見切りをつけて辞めていく海苔養殖漁家も多い。

この現状に歯止めをかける行動を早く起こさなければ、日本の食生活の中から海苔の陰が薄れることになりそうである。
海苔を食材の一つとして生かしてもらえるシェフや食品メーカーの出現に期待したい。   (治)
2007.07.27掲載
◎転機に立つ海苔輸入

平成19年度の韓国、中国から輸入される海苔の割当て枚数が2月に決まった。
割当て総枚数は7億4,100万枚で、韓国から輸入できる枚数は4億3,600万枚。中国の割当て分は2億4,000万枚。残りの6,500万枚は中国、韓国のいずれからでも輸入できる枚数である。

特に、海苔業界には、韓国から2億6,100万枚(内・味付け海苔1億3,900万枚)の輸入枚数が割当てられた。中国からは1億8,000万枚(内・味付け海苔2,000万枚)の輸入枚数が割当てられた。

そして、韓国海苔輸入のための入札会が、5月15日〜16日まで、韓国のソウルで開かれた。ところが、韓国から出品された乾海苔の枚数は、輸出できる乾海苔枚数・1億2,200万枚より1,709万枚少ない1億0,491万枚であった。

入札の結果、売買が成立した枚数は2,832万枚で、出品枚数の約27%であった。1昨年までは全量成立していたが、昨年約70%の成約にとどまり、平成5年から韓国海苔輸入が再開されて以来初めて100%成立しない事態が起き、異変を感じたが、今年は、30%にも満たない成立枚数で、
韓国
海苔輸入に大きな転機を感じさせる動き
であった。

ちなみに、韓国特有の「塩味」味付海苔については、輸入割当枚数をほぼ100%契約成立している。
日本でも「塩味」味付海苔の需要は安定しており、ハングル表示の商品も
増えている。
そして、中国は、5月21日に、日本の海苔業界に対して、「入札会を中止したい」と一方的に通告してきた。
今年の中国は過去最高の約30億枚の生産枚数に達したと見られるが、国内需要の伸びが大きいこと、輸出が伸びていることが大きな要因だと見られている。日本産海苔質に似ており、価格も安いといわれていたが、「元高」が続いており、輸送費、関税など諸経費を加算すると、日本の海苔が安くなっている現在、業者にとって利幅が少なくなっていることや安心・安全の面で今一つ気が進まないのが原因といえよう。


輸入海苔に大きな転機が訪れているようだ。(治)
2007.06.28掲載
◎平成18年度の海苔生産終る

平成18年度の海苔生産は5月10日頃に終わった。

海苔の生産年度は、その年の9月から翌年の8月末までである。
したがって、表記する年度は生産が始まった年を基準にするため、平成18年に生産が始まったから、
平成19年5月に生産が終わっても、平成18年度ということになる。

さて、生産が終わって見ると、全国で入札に出品して販売した枚数は、
95億6,779万枚
になった。昨年に比べると3億7,622万枚少ない。

しかし、海苔1枚当りの平均価格は、8円65銭で前年より61銭安くなっている。
通常、天産物は自然の影響を受け易く、毎年生産状態は不安定である。
そのため、前の年より生産数量が減ると、値上がりするのが当たり前であるが、前の年より生産量が
減ったのに安くなっている。
前の年の売れ行きが悪く在庫が多いことが大きな原因であるが、このところ、海苔の売れ行きが
良くない。
10数年前までは、お中元、お歳暮の売れ行きはデパート、スーパーでは1番から3番目に多い商品
であった。最近では、7番から10番目に落ちている。

いま、海苔業界では、何とか売れ行きを伸ばそうと、知恵を絞っているようだが、妙案が浮かばないようだ。「どなたか、お知恵をお貸し頂けないだろうか」と、
賞金を出して呼びかけたらどうだろう−と思うのだが、その知恵も浮かばないか・・・。 (治)
2007.04.25掲載
◎いよいよ新海苔シーズンF
 《海苔の色》

海苔は黒くて艶のある海苔が、おいしい海苔の見分け方の基本として一般に伝えられている。
もちろん「黒色で艶のある、ぴかぴか光った海苔」が美しくて美味しそうだ。
しかし、必ずしもそうとは言い切れないところに、
美味しい海苔選びの難しさがある。

海苔は本来、4つの色素によって構成されている。
@赤色・フィコエリスリン(紅色の色素タンパク質。熱に弱く、湿気に強い)。
A青色・フィコシアニン(青色の色素タンパク質。熱に強い)
B緑色・クロロフィル(葉緑素。熱に強い)
C黄色・カロチン(黄色〜橙色。不飽和炭水化物でビタミンAの供給源)

海苔は紅藻類といって、緑藻類(アオノリ、アオサなど)、褐藻類(コンブなど)に比べると、

本来赤味を帯びた海藻
である。
赤、青の色素蛋白質は太陽に当ると光合成によって光のエネルギーをクロロフィルに伝えて光合成を
さらに進める役割があり、旨味の成分を増やす働きをする。

その結果、太陽の光を十分に当て深みのある海苔作りをすると
やや赤味がある海苔になる。
したがって、干潟に支柱を建てて網を繋ぎ、潮の干満による日光欲をさせている産地の海苔に美味しいものが多いといわれる。

また、焼き海苔が「緑色」をしているのは、熱に弱い赤の色素が消えて、葉緑素が残ってしまうためで、
これを湿気の多い場所に置くと「赤色」の色素が多くなってしまうから「赤紫」に色が変わるのである。
写真は、海苔に含まれる4種類の色素(着色料で合成したもの)。
海苔に含まれる4種類の色素
2007.03.27掲載
◎いよいよ新海苔シーズンE
 《機械化進む海苔抄き》


昭和36年頃までは、海苔抄きも、手抄きで田んぼの中に掛け棚を並べて天日干しで仕上げる風景が
多かった。
ところが40年代に入るころから、回転式の抄き機械が作られ、乾燥小屋に炭火を入れて抄いた海苔を掛けた棚を回転させながら乾燥する方式が始まった。
やがて炭火が灯油に変わり、乾燥機械が出来、昭和49年から52年にかけて、摘んだ海苔を刻み、
パイプで機械に送り込み、自動的に抄き枠に海苔を流し込んで抄き上げる
「海苔自動製造機」が製作された。
当時、海苔自動製造機の値段は1台300万円相当であったように思う。

新築の家1軒分に相当するような感じであった。

その後、海苔の製造工程に係るいろんな機器類が開発され、現在は、摘み取った海苔を大きな攪拌水槽に入れると、海苔を真水で洗いながらゴミを取り除き、刻み、大型の全自動式海苔製造機に自動的に送り込み、その日に摘んだ海苔質に合わせて乾燥できる
システム化された海苔製造機が使用されている。
海苔製造機の抄き部分(佐賀有明海で)
大城憲治氏撮影

こうした海苔製造設備一式を揃えるには、やはり現在の価格で、新築1軒分に相当するようだ。
海苔の製造原価は上がるにもかかわらず、産地価格はなかなか上がらず、海苔漁家は減る一方
である。
2007.03.06掲載
◎いよいよ新海苔シーズンD
 《夜中の海苔摘み》


新海苔シーズンもいよいよ終盤に差しかかった。
3月一杯で海苔摘みを終わる産地が増えているが、4月中旬まで続ける産地もある。

1月から2月一杯が最盛期で、潮の干満によって作業時間が前後するものの、
午前2時ごろの真夜中から始める漁家もある。
全体に午前5時ごろには海苔摘みを始めるが、寒中の暗闇の海苔漁場で、頭につけたカンデラの明かりを頼りに「海苔摘み機」を操りながら、およそ3時間、黙々と海苔摘み作業が行われる。
しかも、この作業を夫婦で行っている漁家が意外に多い。

夫婦が摘んで帰ると、海苔抄きの作業場には、両親が待ち構えて、海苔抄き機械から出てくる海苔の
出来具合を見ながら、品揃えをして箱詰め作業をする。
一家総がかりの作業は午前中一杯行われる。

↑夜中の海苔摘み作業(佐賀有明海の漁場)
                  大城憲治氏撮影
出来が良くて、1枚30円以上の入札値段で落札される時は、つらい作業にも耐えられるが、海の状態が悪く質が落ちて1枚10円以下で落札される時がシーズン中で一番つらい時である。

今年は、暖冬で上質の海苔が少なかった。枚数は昨年並みになったところもあるが、生産枚数が少ない産地では、ひとしお厳しい年になりそうだ。(治)
2006.11.07掲載
◎いよいよ新海苔シーズンC
 《野外で採苗する方法》


大型の水車に30枚から50枚の海苔網を撒きつけて回転させながら、水槽に吊り下げた海苔種が入っているカキ殻から放出される海苔の種苗を網に付着させる陸上採苗に対して、30枚ほど重ねた海苔網に、海苔種が入ったカキ殻を2枚ほどビニール袋に入れ、30個ほどを等間隔に吊り下げ、それを海上に広げてビニール袋から出てくる海苔種を30枚重ねの海苔網に満遍なく付着させる採苗方法を
「野外採苗」と呼んでいる。

いま、この方法で採苗を行っているのは、
九州の有明海だけに見られる。
干満差6メートルの遠浅の干潟が続き、24時間のうち2回、3〜4時間海苔網が空気中にさらされ、
自然の力に任せた海苔種の網への着生を行うことは、

海苔本来の姿による生育
を助ける養殖方法でもある。

10月7日〜8日にかけて、30枚重ねの海苔網に種を付着させ、3日〜4日間でビニール袋の海苔種を取り外し、生長させながら、15枚、5枚、3枚と決められた養殖漁場に広げて行く。
この作業の段階で、3分の1の種が着いた海苔網は、脱水してビニール袋に詰め、冷蔵庫に入れ−25℃の冷蔵庫に入れる。これは、いま張り込んで生長させた海苔が、海況の変化で生産出来なくなった時に取り替える予備の網である。
これを
「冷凍網」と呼んでいる。

10月末までに有明海全域でこの作業が終わり、あとは、海苔の生長を待ち、
10センチ以上に生長したころから海苔摘みが始まる。

「新海苔」「初摘み」である。
10日頃から有明海全域で新海苔摘みが始まる。

写真は、野外採苗風景。撮影・大城憲治氏
2006.10.20掲載
◎いよいよ新海苔シーズンB
  《陸上で採苗する方法 》


前便で紹介した、カキ殻に海苔の種を潜り込ませ、秋口に熟成して殻胞子(かくほうし・海苔の種)を放出したところを海苔網に付着させることを「採苗」というが、その方法に2つの方法がある。
その方法で、全国で多くの産地が取り入れているのが、「陸上採苗」という方法である。

3m四方、深さ1m程度の防水シートの水槽を作り、海水を入れる。その中に果胞子で黒くなったかき殻を300個ほど吊るし、殻胞子を水槽に放出させる。水槽の上に直径3mほどの水車(鉄輪)を置き、水車に海苔網を30〜50枚ほど巻きつけて海水の中を潜らせながら回転させて、海水中に放出された海苔の種を海苔網に付着させる方法である。

海苔種が、海苔網に十分付着していることを知るためには、海苔網の一部を5cmほど切り取り、顕微鏡で着生状態を視認して確認する。水車を回し始めて20分程度で着生する。着生が確認されたら直に水車から取り外して別の水槽(約2.5mと約5mの長方形)に移し、海苔種の網への着生を安定させる。
取り外した水車には、直ちに新たな海苔網を巻きつけて採苗を始める。
この繰り返しで、午前6時頃から8時過ぎまで、採苗が行われる。
海苔の生理状態は不思議なもので、太陽が高くなり、水温が上りだすと殻胞子の放出を止めてしまう。

海苔種が付着した網は、海水温が23℃以下に下がった頃合を見て海上に張り込まれて、海苔の生育を促す「養殖」が始まる。

10月中旬頃
になりそうだ。
しかし、有明海の産地では、
「野外採苗」という方法が行われる。10月7日〜8日にかけて始まった。(治)
写真は、兵庫県のり研究所で始まった、陸上採苗の風景=撮影・大城憲治
2006.10.10掲載
◎いよいよ新海苔シーズンA
 《出番を待つ海苔の種》

全国の海苔産地では、海苔網に海苔の種付けをする「採苗」という作業
が始まっている。
「海苔の種」は、春先から秋口にかけて、主に海底の貝殻の殻に潜り込んで生活している。
そして、秋口の水温が冷え始める頃、種を海中に放出する。
このような、海苔の生活循環(ライフサイクル)の決め手である、貝殻での生活部分を発見したのが、

イギリスの海藻学者キャサリン・M・ドリュー女史
である。

おかげで、春先に海苔の種になる胞子を貝殻(かき殻が多い)に植えつけて、秋口まで水槽で培養(育てる)し、種が放出される秋口に、種の付いたかき殻を水槽に並べて、海苔網を重ねて巻きつけた、
大きな水車をぐるぐる回しながら海苔網に種を付ける方法や海苔網に20センチ四方のビニール袋を取り付け、ビニール袋の中に、海苔種の付いたかき殻を1〜2個入れて、その網を海に張り込む方法などで、種付けを行う養殖技術が生み出された。
これを「採苗」といっている。
海苔種も、まだ、水槽の中に吊るされて、出番を待っているところが多いが、写真のように、海苔の種が増えて、かき殻が真っ黒になっている。

 
この種が、海の中に飛び出し、海苔網に付着して、細胞分裂をしながら成長するが、その年の回りの海況が成長に大きな影響を与える。
ドリュー女史のおかげで生み出された、日本の海苔養殖方法を受け継ぎ、産業として今日まで発展させてきた技術は、何としても守り継がなければならない。
そのためにも、森を守り、健全な生活環境を守り、
海を守る努力が大切である。(治)

2006.09.12掲載
◎いよいよ新海苔シーズン@
  《有明海で支柱建て始まる》


九州の有明海では、海苔養殖の網を海上に吊るすための「支柱建て」が始まった。9月1日から始まり、中旬頃まで続くが、天候を見ながら、家族総出の作業になる。

遠浅の干潟漁場に支柱を立て込んで海苔網を張り込む養殖漁場があるのは、
有明海が全国最大規模で、伊勢湾、東京湾などに点在している。

有明海の海苔養殖漁場では、海苔網10枚と8枚を張り込んだ広さを1コマと呼称しているが、10枚の海苔網を張りこむために支柱が約66本必要になる。
有明海全体に張り込まれる
網の枚数は、約75万枚でこれを支える
支柱の本数は約450万本
になる。

10月中旬から3月中旬までに飛行機で佐賀空港に着く場合、低空飛行の空から見る有明海は、一面を海苔網が覆い、かすり模様に見えるようになる。
特に、10月中旬頃までは、海苔の種付けが終ったばかりで、海苔網の赤、緑、白、黄色が織り成す「網模様」は、なんともいえない、
有明海の新海苔シーズンの風情を感じさせる。

写真は、支柱建てをする海苔漁家
(10日佐賀・南川副地区で)
支柱建て作業も間もなく終わるが、10月7日以降には新海苔の種付けが始まる。
7日以降に九州を訪れる向きは、良ければ佐賀空港を利用されると、「これが海苔産地か」と感歎されることと思うが、如何なものでしょう。(治)
2006.08.23掲載
◎ノリの保存は・・・

海苔は機械で製造される。
手漉きで天日干し−の製造風景は見ることが出来ない。
ごく一部の産地で、海苔販売業者に頼まれて、僅かな枚数を製造することはある。

今は大型の機械で、
1時間に6千枚以上の海苔が製造されている。その機械から抄き上がって出てくるときの海苔の水分量は約12%。それを10枚づつ二つ折りにし、10束まとめてひと括りにし、36束(3,600枚)を箱詰にして入札会に出し、海苔販売業者が買い付ける。

海苔の入札会は、生産された海苔の鮮度が高い生産期間中(11月〜4月)だけに開かれる。それを買い付けた海苔販売業者は、次の年の生産時期までに売りつなぐため、買い付けた海苔は、品質が落ちないうちにもう一度乾燥させなければならない。この再乾燥の段階で、
海苔が含んでいる
水分を3%程度までに乾燥
させる。

これを寿司海苔、焼き海苔、味付海苔などの原料に使うわけであるが、再乾燥した海苔は、3,600枚入りの箱のまま、5℃から10℃以内の低温倉庫に保管するが、上質海苔は−25℃程度の冷凍庫に保管することもある。

家庭では、そこまで厳重に保管する必要もないが、開封後は、チャック付きのビニール袋に買ったときに同封されていた乾燥剤と共に密封して、冷蔵庫に保管すればよい。
50枚を保存しようと思えば、冷凍室に入れておいた方が良いようだ。

海苔は水分を含むと紫色に変色して、味が落ちてしまう。
これはもう元に戻らないから、佃煮に炊くより方法がないようだ。(治)
2006.08.09掲載
◎おいしい海苔に多い「穴あき」

おいしい海苔の見分け方は非常に難しい。

最近は海苔の店頭販売が見られなくなり、
試食して買う機会がなくなってしまった。
海苔の専門業者は、産地の入札会で見本の海苔を焼き、味見をして買うことが多い。専門業者は、毎日海苔を見て、焼いて味見をしているから、ベテランになると、海苔を見ただけで、おいしい海苔を見分けることが出来る。
この数年来、海苔業者の買い付け内容を見ていると、初摘みの海苔を買う場合、海苔の表面に米粒が通るくらいの穴がある海苔で、濃い緑色に焼ける海苔を買う姿が増えている。

初摘みの海苔は、
細胞が軟らかく、摘み採って乾燥する際海苔芽が縮み
穴が空き易く
なる。
そして、抄き上りも、やや薄い海苔に仕上がる。通常、海苔の重量は、100枚で300gから320gに作り上げる。しかし、本当においしい海苔は、
300g以下で280g程度に抄き上がった
もの
に多い。

海苔に穴が空かないように作るようになったのは、海苔巻きのコンビニおにぎりが売れ始めてからである。中のご飯が見える海苔に巻いてあるおにぎりが売れ残る率が高いため、産地に穴の空かないような海苔作りが指示された。その結果、見た目の良さを追う海苔作りになり、産地で、海苔本来のおいしい海苔作りが出来なくなってしまった。

食べ物は、見た目の良さも大切かも知れないが、
最も大切なことは、産物の味を生かす育て方、作り方だと思うのだが。
大切なことが見失われるようになっては、味も素っ気もない食生活になりそうだ。(治)
2006.08.02掲載
◎おいしい海苔とは

小売店頭で試食できない海苔の味を見分けるのは至難の業である。
従来から、一般的においしい海苔の見分け方として、
「色が黒くて艶のあるもの」を
基準にするように
−といわれている。
確かに、一つの方法ではある。
しかし、それだけではない。
海苔の色艶は、4つの色素で表されるが、味の良い海苔の場合は、
赤味を帯びた黒さで、「赤黒い」と表現する漁家もいる。
海苔の色素だが、
@フィコシアニン=青い色。
Aクロロフィル=緑色。
Bカロチノイド=黄色。
Cフィコエリスリン=赤い色。
この4つの色素がほどよく配分されると、黒色に見える。

海苔は、海表面で養殖されているから、日光を良く浴びて、光合成を行いアミノ酸を体内に蓄積する。
その結果、フィコエリスリン(赤い色)が増えて、味のある海苔はやや赤味を帯びた色になる。
特に、支柱に海苔網をくくりつけて養殖する有明海の「支柱漁場」で、干満の差によって海苔網が空気中にさらされる養殖方法の海苔は、
赤味を帯びた海苔で、味のある海苔が多い。

海苔を焼くと、フィコエリスリンは熱で分解して見えなくなり、熱に強いクロロフィルが残って緑色になるが、おいしい海苔は、深い緑色になる。
最近は焼き海苔の市販品が増えているが、海苔巻きも焼海苔で巻いた方が、
酢飯の香りと良く合い、歯切れも良くおいしいように思う。(治)
2006.07.26掲載
◎韓・中国の輸入海苔入札終わる

平成18年度の海苔輸入割当枚数は、5億8,500万枚。

内訳は、韓国からの輸入割当枚数は、3億4,000万枚。中国からは、2億3,000万枚。
その他の国からは1,500万枚になっている。

昨年度は、全体で4億枚。1億8,500万枚の増加である。

この内、海苔の専門業者に割当てられた輸入枚数は3億3,700万枚(全体の57.6%)、内訳は、
韓国・1億8,700万枚。中国・1億5,000万枚。この分についての入札会が、5月18日、19日・韓国ソウル特別市。6月2日・中国江蘇省南通市で、それぞれ開かれた。

その結果、韓国海苔は、乾海苔・味付海苔を含めて83.3%が落札され、海苔中国海苔は、66%が落札された。いずれも、日本の海苔業者が示した入札価格では売り渡すことが出来ないとして、売買が成立しなかったものである。

輸入関税、手数料、運賃などを加味すると
日本産海苔と大きな価格差がなくなり
双方の妙味が薄れているようだ。(治)
2006.07.19掲載
◎平成17年度の海苔生産99億枚に

平成17年度(平成17年10月〜平成18年5月)の全国海苔生産数量がまとまった。
海苔の数量は枚数で表すが、
全国で99億5千万枚に達した。
昨年より約4億枚多い。

全国を地区ごとに見ると、
◇東日本地区(宮城県〜三重県)=21億3,942万枚(全国の22%)。
◇瀬戸内海地区(大阪府〜山口県、徳島県〜愛媛県)=26億9,014万枚(同27%)。
◇九州地区(宮崎県除く6県)=49億7,745万枚(同51%)である。

平成14年度以降は100億枚の生産枚数に達していない。海苔の需要低迷と消費市場で低価格の販売競争が続き、そのしわ寄せが産地価格の低迷につながり、海苔生産漁家が減少したことや、この2年ほど、瀬戸内海の生産状態が良くないことなどが主な原因になっている。

ただし、
今年の海苔は、全国的に草質が柔らかく、味の良いものが
多い。

その多くがギフト商品に使われているため一般の小売店頭では見かける機会も少ない。多くの消費者に美味しい海苔を味わってもらえるようになれば、産地も活気づき、より美味しい海苔作りに励みが出るのだが、消費市場の低価格による販売競争が、一般小売市場での上質品販売を難しくしているようだ。(治)
2005.11.18掲載
◎新海苔入札始まる

新海苔の入札が始まった。
全国で一番早く海苔摘みが始まる宮城県が、毎年トップを切って入札会を開く。全国から入札会参加権を持った海苔商社が集まって競争入札で買い付ける。
今年の宮城県の海苔は、海水に含まれる窒素分などの海苔の生長に必要な栄養塩が少なく生長が心配されたが、11月上旬の雨で空気中の窒素分が海中に注がれて、何とか質の良い海苔が増え始め、ほっとひと息といったところのようだ。
全国的に秋口から年末にかけての気温が高く、水温の下がり具合も遅くなっている。そのため、味の良い海苔が育つ水温の12℃から13℃程度まで下がるのが遅く、高水温の中で海苔も息苦しい環境で育っている。
水温が高く、海中に窒素やリン分が増えすぎるとプランクトンが増えて、赤潮が発生して、海苔が必要とする栄養分を横取りするため、海苔は栄養不足になって、黒い色が黄色になってしまう。

また、雨が多すぎると、河川からの流量も増え比重(塩分濃度)が下がり、海苔特有の障害が発生して、海苔の生長が阻害される。
海苔は、こうした環境の変化に耐えながら生長して、20センチ程度に伸びると摘み取られて、人の栄養源として食べられる。海苔には感謝しなければならない。

さて、
11月下旬から東京湾、伊勢湾、有明海で生産された新海苔の
入札
が始まる。瀬戸内海は、一足遅れて、12月から新海苔入札を行う。
写真は11月15日の宮城県産海苔の初入札会

まだ、海苔とっては不安定な海況が続きそうである 。
しかし、おいしい海苔に育って欲しい。また、新年の食卓に新海苔の香りが十分届けられるように、育って欲しいものだ。

(治)

2005.11.04掲載
◎新海苔の養殖始まる

有明海の新海苔種付けが終った。
これから、海苔芽が伸びた網を漁場一杯に広げながら張り込む作業が始まる。
それにしても、年々海水温が高く、今年も5日から16日にかけて始まった海苔種付け時期の有明海の水温は、5日の26℃から順次下がり16日には24℃台まで下がったが、それでも
平均水温に比べて2℃高くなっている。
水温が22から23℃位に種付けを始めて、20℃を下回る程度から海苔芽が伸び始めるとおいしい海苔が採れるということで、水温が高くなっているので、海苔の種付けの時期を遅らせてはどうか−
という声もある。
しかし、海苔の売れ行きが悪く、入札値段が安くなっているため、少しでも早く海苔摘みを始めて、生産金額を増やさなければならないという心理も働いて、なかなか、種付け時期を遅らせようという動きは見られない。同じ海域に海苔網を張りこんで養殖する漁業だけに、全体の足並が揃わなければならない。
海苔の種付け風景
写真=海苔の種付け風景(福岡有明海苔漁場)

今年も、高水温の中で、生育を気にしながらの種付けになったが、水温低下が遅いだけに、生育の先行きを心配する声もある。うまく育ってくれることを祈るのみだ。

それにしても、気候の温暖化を作り出したのは便利さを追い求めた人間社会によるところが大きいだけに、おいしい海苔作りの為にも、生活のあり方を考え直さなければならないようだ。

(治)

2005.06.28掲載
◎輸入が始まった中国海苔

日本の消費市場に、史上初めて中国産養殖海苔がお目見えすることになった。
日本では、国内海苔養殖漁業の保護育成のため、海苔の輸入には、国の許可が必要で、輸入相手国は韓国に限られていた(輸入割当制度)。
毎年輸入枚数を日韓漁業交渉で取り決め、国から輸入のための外貨割当てを受ける必要がある。これに対して、中国から「韓国だけに輸入を認めているのは、世界貿易機関(WTO)の協約違反ではないか」と強い要求があり、今年から、輸入割当制度を維持しながら、輸入相手国の制限をなくすことにして、中国海苔の輸入も認めることになった。
その初入札会が6月2日、中国・江蘇省連雲港市にある「国際海苔取引所」で行われた(写真)。
江蘇省の沿岸では
中国の養殖海苔の約90%が生産されており、生産設備の多くが日本製製造機械を設置し、日本と同じような養殖方法である。
国際海苔取引所

また、海苔の質も有明海で生産される海苔に似ており、柔らかくて味のあるものも生産されている。生産技術も良くなって、安全な食品作りの基準を作って輸出に力を入れる方向で動いている。


今年の中国海苔輸入枚数は、8,020万枚。
初入札会には日本から48社が参加した。日本の商社の評価は「想像より質の良い海苔が生産されている」ということであった。
入札された海苔はすでに日本に運ばれ始めているが、
7月に初めには、海苔業界初の「中国産」と明記した焼海苔と味付け海苔が小売店頭に並ぶことになっている。
業界の先頭を切って発売する加工海苔メーカーでは
「質の良い中国海苔で日本の消費者の評価を得たい」と語っている。
日本の海苔産地は「中国産海苔」への消費者の関心度に注目している。(治)


2005.03.21掲載
◎変動激しい有明海の海苔養殖

今年の冬は、12月下旬から突然訪れ、2月に入って全国に雪を振り撒く、変な冬だった。
九州も例年にない雪の多い冬で、凍える寒さは感じませんが、日照率の少ない冬になっている。
 これが、今年の有明海の海苔生産に良い影響を与え、九州地区の海苔生産枚数は、3月15日現在で40億7,317万枚に達し、
有明海の海苔養殖史上最高の生産枚数・45億枚を達成しそうである。
昨年同期の実績に比べると、5億5,937万枚多くなっている。昨年のこの時期には、有明海は海苔に必要な海の中の栄養塩が少なく、海苔生産はほぼ終わりの状態であった。
 ところが、今年は2月中旬から有明海沿岸では、くもり日和が多く、雨や雪が2〜3日ごとに繰り返す
日が続き、水温も10℃以下の日が多かった。
こうした天候が有明海に適当な栄養塩を与え、プランクトンの発生が少なく、海苔の生長を妨げる海苔
特有の病害の発生、拡大を防ぎ、順調な海苔の生育を助けたようである。
 その結果、有明海での海苔養殖史上最高の生産量に達しそうな状態が目前に迫っている。
45億枚というと、昭和41年(31億枚)から同45年(55億枚)頃の全国総生産枚数に匹敵する。
有明海の面積は1,700kuで、その内、海苔養殖の面積は約270kuで
約16%に当たる。
 ところが、有明海は全国一の不安定な海苔産地でもある。通常年で4億枚から5億枚の変動差がある。大きい時は10億枚以上になる。諫早湾の干拓との関連で特に大きな話題になった平成12年度
(24億枚)は、大不作で同11年度(41億枚)の13億枚減、ところが翌年の13年度(44億枚)は
20億枚増という状態である。
天候や海のわずかな変化が大きく左右するのが海苔養殖といえるようだ。(治)

2005.01.18掲載
◎「円満草」と「ばくち草」

海苔は、気象や海況、そして、作る人によって、出来不出来が大きく左右される海藻である。
つまり、
非常に繊細な神経の持ち主であるといえよう。それだけに、おいいしい海苔を
作る海苔師にとって、海苔作りに生きがいを感じされるものがあるようだ。
 水温・12℃、比重・23、栄養塩・7マイクロ(100ガンマ)という恵まれた海況の中で、1日4時間ほど淡い冬の日差しに当たり、柔らかな北風に当たりながら、海水の中で
「ひねもすのたりのたりかな…」の生活を過ごすことが出来れば、色艶が良く、味のある海苔に生長してくれる。
この時が豊作である。
 しかし、この環境が崩れると、海苔特有の体調変化をきたして、色がさめたり、味をなくして、途中で
生長が止まってしまう。
これが不作である。
このような、豊・不作の繰り返しに海苔師は、何度も泣かされてきた。
そこで、豊・不作の激しい海苔養殖を指して
「ばくち草」ということもある。
 しかし、不作の中でも、寒い冬の海の中で手をかけて育ててやると、数は少ないが、おいしい海苔に
育ってくれる。また、摘み採った海苔を1枚1枚丹念に仕上げてやると、姿かたちの良い海苔になって
くれる。
 この仕上げの時も、家族総出の作業で、みんなが海苔をいたわる気持で接すると、十分それに応えてくれると海苔師はいう。「海苔にいたわりが伝わるようにするには、家庭が円満でなければならない。
おいしくて、姿かたちの良い海苔は、高値で売れる」。それが、また、家庭円満につながる−という。
つまり、円満な家庭で作られた海苔は、おいしくて価値のあるものにつながるから
「円満草」
ということになる。
海苔作りも大変である。(治)

2004.12.09掲載
◎上質海苔の需要を待つ「海苔師たち」

先に、ポーランドのテレビ取材陣が千葉県の海苔生産の取材を掲載した。
海苔が日本の食文化に与える影響について取材し、日本文化紹介シリーズの一つに取り上げるという
ことであった。ポーランドでも回転寿司が増えて海苔の需要は増えているという。
しかし、その海苔の多くが中国産海苔である。
今、海苔の生産国は日本ばかりではない。韓国の生産の歴史は古く、65億枚の生産力を持っている。中国も10年程前から、日本の海苔品種と同じで、日本の養殖方式を取り入れた生産が行なわれている。その生産量は、約20億枚に達している。
日本は、海苔生産の先進国だが、国内で生産された約100億枚の
海苔のほとんどを国内で消費している。

輸出量は約2億枚程度で、国内消費量は100億枚弱であるから、供給過剰の状態が続いている。
それにもかかわらず、韓国から約2億4,000万枚(平成16年実績)が輸入されている。
さらに、2005年から中国の海苔が輸入されることが決まった。この数量はまだ決っていない。

 供給過剰で国内の産地価格は、この20年間で約17%安くなっている。輸入が増えれば、さらに、
下がるのではないかと国内の海苔養殖漁家は心配している。韓国も中国も日本に比べると生産コスト
は低く、価格面ではとても太刀打ちできない。
しかし、味の良さでは、輸入海苔より優っており、その部分をもっと多くの人に知ってもらい、国産品の
良さを訴えなければならないが、まだ十分とは言えない。
 韓国、中国から日本市場に進出しているにもかかわらず、
日本の海苔の海外市場進出は微々たるものである。
海苔は低カロリーで食物繊維が多く、多くのミネラルを含んだ健康食品として海外でも注目される食品
の一つで、寿司屋も、回転すしも増えているから、もっと積極的に海外市場に進出しなければならないが、日本の海苔産業界は、国内需要に支えられ温存された永年の流通システムのぬるま湯に浸ってきたため、なかなか抜けられないのが現状である。
 こうした、体質から抜け出すには世態が代わらなければ無理のようだ。
世界一の質と生産量を誇る日本の海苔産業界は、世界の海苔生産国のリーダーとしての自覚を持ち、輸入海苔に対する防戦体制だけでなく、
海外市場を開拓する気概を早く身に付けて欲しい
ものである。(治)

2004.11.23掲載
◎「海苔は国際食品だ」

先に、ポーランドのテレビ取材陣が千葉県の海苔生産の取材を掲載した。
海苔が日本の食文化に与える影響について取材し、日本文化紹介シリーズの一つに取り上げるという
ことであった。ポーランドでも回転寿司が増えて海苔の需要は増えているという。
しかし、その海苔の多くが中国産海苔である。
今、海苔の生産国は日本ばかりではない。韓国の生産の歴史は古く、65億枚の生産力を持っている。中国も10年程前から、日本の海苔品種と同じで、日本の養殖方式を取り入れた生産が行なわれている。その生産量は、約20億枚に達している。
日本は、海苔生産の先進国だが、国内で生産された約100億枚の海苔の
ほとんどを国内で消費している。

輸出量は約2億枚程度で、国内消費量は100億枚弱であるから、供給過剰の状態が続いている。
それにもかかわらず、韓国から約2億4,000万枚(平成16年実績)が輸入されている。
さらに、2005年から中国の海苔が輸入されることが決まった。この数量はまだ決っていない。

 供給過剰で国内の産地価格は、この20年間で約17%安くなっている。輸入が増えれば、さらに、
下がるのではないかと国内の海苔養殖漁家は心配している。韓国も中国も日本に比べると生産コストは低く、価格面ではとても太刀打ちできない。
しかし、味の良さでは、輸入海苔より優っており、その部分をもっと多くの人に知ってもらい、国産品の
良さを訴えなければならないが、まだ十分とは言えない。
 韓国、中国から日本市場に進出しているにもかかわらず、日本の海苔の海外市場進出は微々たるものである。
海苔は低カロリーで食物繊維が多く、多くのミネラルを含んだ健康食品として海外でも注目される食品の一つで、寿司屋も、回転すしも増えているから、もっと積極的に海外市場に進出しなければならないが、日本の海苔産業界は、国内需要に支えられ温存された永年の流通システムのぬるま湯に浸ってきた
ため、なかなか、抜けられないのが現状である。
 こうした、体質から抜け出すには世態が代わらなければ無理のようだ。
世界一の質と生産量を誇る日本の海苔産業界は、世界の海苔生産国のリーダーとしての自覚を持ち、輸入海苔に対する防戦体制だけでなく、海外市場を開拓する気概を早く身に付けて欲しいものである。(治)

2004.11.04掲載
◎「漁業者も雑木植林で治山治水!」

今年の台風被害はこれまでになく大きなものになっている。
河川の氾濫で水没した家屋や川のようになった道路を見ると、「いったい、どうなっているんだ…」と
驚くばかりである。
テレビの海外ニュースで見る大雨や台風の被害と同じ場面が繰り広げられている。
この被害で犠牲になった人が高齢者に多いというのも「なぜだ…」のひとつである。
「国を治める基本は、治山治水である」と言われる。
こういう被害を見るたびに、この言葉を思い浮かべるが、永遠の課題でもある。
いつの台風でも、海に流れ込んでくる
「流木」の多さには驚く。今回も18号台風では、愛知県の知多半島の野間と言うところから半島の先端にかけの西部地区一帯におびただしい流木が押し寄せた。
また、22号では、東京湾の木更津一帯に流木が押し寄せた。台風の進路に当たった湾岸では、大量の流木やゴミが押し寄せる。陸上の台風被害と同じように海上の被害も大きい。大雨による河川の洪水で、普段、河川上流や河川敷の藪に不法投棄されていた家電品、大型ゴミがきれいに掃除されて海まで押し流されてくる。
まさに、
海が掃き溜め状態になってしまう。大雨、台風の際は、いつもこの繰り返しである。
この数年、漁業者が地域の山を借りて、雑木林を作る運動を進めている。杉や檜の植林は進んだが、
山の際まで杉や檜が植えられて、山裾に雑木林が見られなくなった。その分保水力がなくなっている訳で、何とか保水力のある樹木を植え、それが河川の氾濫を少しでも鎮める役目を果たしてくれることを期待したいものである。(治)

2004.9.13掲載
◎「海きれいにして、海苔育たず…?」

 今年はどうやら台風の当たり年のようである。
この台風、地球上の自然の摂理でどうしょうもないが、生活のリズムを乱すいろいろな被害を与えるため、印象は良くない。しかし、意外な好影響をもたらすことがある。

 このところ、全国的に海苔産地の海況が思わしくなく、海苔の生産状況が良くない。
その大きな原因の一つに、最近の海には、美味しい海苔の生育に必要な栄養分が少なくなっている
ことが挙げられている。
海苔の栄養分は、海中の窒素、リンなどであるが、その量が少なくなっていると言うことである。
また、環境についてみんなの関心が高まるとともに、海がきれいになって、透明度が高くなって、見た目は海がきれいになりつつある。
 下水処理が整い始め、河川から流れる水はきれいになっているが、海苔が欲しがっている栄養分は、少なくなっているようだ。これは、海苔漁業者の多くの人が感じていることでもある。
しかし、環境問題についての一般的な現在の風潮の中では、「海がきれいになり過ぎては、おいしい
海苔は採れにくくなるんですが…」とは、言えない。

 そこで、期待したいのが、
台風による海の引っ掻き回しである。
大荒れで海の底から引っ掻き回して、海底の干潟の中に埋もれている窒素やリンを海中に拡散してくれれば、10月から始まる海苔養殖にもタイミングが良く、全国の皆様に「おいしい海苔」を提供することができるのだが…と、密かに思うことがある。

でも、「海はほどほどにきれいにして下さい」とか「9月の台風は有り難い」などとは、心に思っていても、言えるものではありませんよ、ネッ。(治)