干潟のつぶやき過去の履歴
2011.11.20掲載

海苔のお話し(9)
◎新海苔の生産始まる
朝夕はやや肌寒さを感じるようになったが、11月半ばを迎えているにもかかわらず日中の寒暖差は激しい。このような気候の時は、のり養殖も難しく、漁場に張り込んだ海苔網の高さを微妙に調節しながら、日光に当てる時間の長短を調整しなければならないから大変だ。
全国的に10月に入って張込んだ網に生長した海苔芽の長さが15センチ程度になったところで、柔らかい葉先の部分を摘み取る
「初摘み」が始まる。
宮城県では、11月1日から海苔摘みが始まったが、千葉県でも10日頃から初摘みが始まっている。
さらに、九州の有明海一帯でも12日頃から一部で新海苔摘むが始まっているが、15〜16日頃から本格的な新海苔摘みが始まる。写真の海苔は、11月12日に熊本県の有明海に面した熊本市河内町の沖合い漁場で摘み取られた新海苔である
艶の良い色黒の海苔が出来上がっている。

 
海苔は10枚を2つ折にした1束を1帖と呼んでいる。
10束まとめて1束(そく)
というが、写真がそれである。

写真をご覧になると産地のデザインを印刷した紙テープ(帯紙・おびし)に23.11.12の日付の印字が見える。その横に
丸に囲んだ「浮」の赤字が印字されている。これらは、生産した日と生産された漁場の表示したものである。この写真では見えないが、生産者の氏名又は生産者番号、生産された県の漁協中央団体(県漁連)、生産者の所属漁協、検査を受けた証明の「等級」が印字されている。
写真の部分の意味は、「23年1月12日に浮き流し漁場で養殖した海苔です」という、
「海苔のトレーサビリティー」(農産物や加工食品などの食品が、どこから来て、どこへ行ったか「移動を把握できる」こと)の原点です。
かって、1束(10枚束×10束=100枚)をセロハンで包装して販売していた時代には、この帯紙が付いたまま販売されていたことが多く、消費者にも、どこの産地で、誰がいつどのような漁場で生産されたものであるかを認識できる、いま言うところの
「安心・安全」な商品として販売されていたが、焼き海苔、味付海苔、もみのり、ふりかけなどの商品として、小分けされた製品になってしまうと、細かい表示はなかなか難しく、平成18年3月に「海苔トレーサビリティシステム導入の手引き」が作成され、それに準じた表示が「海苔加工品」に表示されている。


「安全・安心」な海苔製品作りには、生産者も販売業者も熱心に取組んでいる。今年も新海苔作りや新海苔販売への取組が始まる。東日本の海苔産地では生産機材の大きな被害が出て、新海苔作りが出来ない地区もある。その分を何とか他の産地がカバーして、おいしい新海苔を店頭に並べようと努力しているところである。今しばらくお待ち下さい。
2011.09.29掲載
海苔のお話し(8)
◎新海苔の養殖準備始まる


今年も海苔養殖が始まるシーズンになりました。
東日本(東海地区以北)地区では、海苔網に海苔の種付け作業が始まっています。種付け作業を産地では「採苗」と言いますが、その方法は、「陸上採苗」と「野外採苗」の2通りがあります。
9月から始まる種付けの方法は「陸上採苗」と言う方法です。産地によって大きさが違いますが、直径約2〜4メートル、幅2メートル位の大きな鉄輪(産地では水車と呼んでます)に海苔網(幅約1.2〜1.8m、長さ約18m)を十数枚から数百枚を巻きつけて、横3m×縦4m×水深0.5m位の海水を入れた水槽の中にのり種を潜り込ませた牡蠣ガラを全面に敷き詰めて、水槽の中を鉄輪を回転させながら牡蠣ガラから出て来る海苔種を必要な量だけ海苔網に付着させる方法です。

この作業は、概ね漁協などの組合が中心に行っています。海苔網に種が付着したことを顕微鏡で見ながら重ねた海苔網のすべてに種が付くまで回転させます。この種をつけた海苔網は、のり網を張込む漁場の水温が23℃以下になるまで、冷蔵庫の中で保管されます。
「野外採苗」と言う方法は、海苔網を30枚程度重ねて、重ねた網の下部にビニール袋を吊り下げて、その袋に海苔種が入った牡蠣ガラを1〜2枚入れて、30枚重ねた網を漁場に張込み、ビニール袋に海水が入り、海苔種が袋に入った海水を伝って、海苔網に付着させる方法です。

この場合、海水が23℃以下で海苔種が海中に出易い状態でなければ、実施することが出来ません。
したがって、10月に入って行われることになりますが、東日本地区は10月上旬に行われる事が多く、
西日本地区は10月中旬以降に行なう産地が多くなっています。

有明海の採苗時期は、赤、緑、黄色、白と色とりどりの海苔網が、一面に広がり、冬の風物詩として、
テレビや新聞で報道されます。
10月中旬から下旬に掛けて、佐賀空港を利用されると、
この模様が低空で見られます。
日本一の海苔生産地「有明海」の冬ならではの姿が見られます。ちなみに、9月から10月初めにかけては、海苔網を支える支柱が建てられます。その支柱の数は、有明海全体で約400万本に達します。
いま、支柱建て込みの最後の追い込み時期になっています。

2011.06.29掲載
海苔のお話し(7)
◎海苔の栄養素について


海苔には多くの栄養素が含まれています。通常「食品標準成分表」に算出されている栄養成分は、食品100g当たりになっている。重量のある食品でれば、食べる量む少なくて済むが、海苔のように軽い食品の場合、100g食べるのは大変である。
ちなみに、海苔は、生産段階の1枚当たり抄きグラム数は、乾燥し上がった状態で3〜3.2g(100枚当たり320g)である。100gというと約30枚になる。
海苔30枚も食べるのは、無理な話であるから、1枚分(約3g)の栄養分がどのくらいあるのか、その成分表がある。「1日30食品を食べるための栄養データブック」(女子栄養大学学長医学博士・香川綾、監修 発行所 女子栄養大学出版部 平成2年4月6版)で、ほとんどの食品の1食分の栄養分がまとめられている。 それによると、「焼きのり1枚・3g」の栄養成分は 次の通りである。

◎エネルギー・・・ 。◎水分・・・0.2g。◎たんぱく質・・・1.2g。
◎脂質・・・0.1g。◎糖質・・・1.3g。◎繊維・・・0.1g。
◎灰分・・・0.2g。◎カルシウム・・・12mg。◎リン・・・18mg。
◎鉄・・・0.4mg。◎ナトリウム・・・4mg。◎カリウム・・72mg。
◎ビタミンA効力・・・390IU。◎ビタミンB1・・・0.03mg。
◎ビタミンB2・・2.9mg。◎塩分量・・0.0g。◎点数・・0.0点。
となっている。他の海藻類に比べると表の通りである。

↑拡大図はこちら

「焼きのり」

上の写真は「焼きのり」。のりは熱を通すと、熱に強い葉緑素が残り、赤、青の色素が消えて、緑色になります。海苔の抄き上がり重量は、1枚当たり3〜3.2グラム程度ですが、焼き上げると2グラム程度になります。 夏の暑い日の食欲がない時は、焼き海苔でおにぎりやいろんな食品を包んで食べると、意外と食べられるものです。 1日2枚で、1日に必要な微量成分が摂取できるので、
「1日2枚食べましょう」というのが、海苔業界のお勧めです。

2011.06.20掲載
海苔のお話し(6)
「宮城県海苔漁家よ自力復興目指せ!」


 宮城県下の海苔漁家が6月から、海域調査、漁場整理を始め、海苔養殖の準備に入ることになっている。県内の海苔漁家は石巻湾、松島湾、仙台湾の沿岸域に約200名いる。3月11日の津波被害で海苔漁家本人が7名行方不明になっている。家族の不明者も出ているようで、ごく一部の海苔漁家が、軽微な被害を受け、今年10月から始まる海苔養殖を始めようと準備を進めている。
約200名の県内海苔漁家で、今後も海苔養殖を続けて行こうという漁家は4月現在150名ということである。今後の目途が立てばまだ増えそうではあるが、漁船、製造機材、製造工場などの設備投資は1億円以上必要になる。個人で再興することはなかなか難しいことである。

手前の土台枠に乗っていた20トンの海苔製造機械は100メートル近く流されて、奥に見える青色の塊になっている。

したがって、同じ地域の人達による「個人同士の協業」「グループ作業」「組合主導の協同事業」などの方法で再興に向けての努力が始まるようだ。県としては、「養殖漁業復興特区」として、養殖漁場を漁業者ばかりでなく一般にも開放して、投資家や企業の参加による企業としての経営方式を進めようとしているが、養殖漁業とはいえ、あくまでも自然の海を利用して種から育てようというもので、養殖技術が進んでいるとはいえ、その年の気象、海況によって豊凶の差が激しい漁業だけに、投資家や企業が取組んでも一般的な地上での原材料を混ぜ合わせて加工食品を製造する企業とは基本的に違う。
投資家や一般企業が参加して養殖漁業を企業化してうまく行くようであれば、とうの昔にそのような養殖企業が育っているはずである。むしろ、養殖漁業を外見上うまく行くのではないかと手を出した投資家も企業も大損をして手を引いた結果が、今日の養殖漁業の姿として残っているのが現実である。
養殖漁業企業として販路を開拓し消費者に繋げようとしても、机上で想定するほど簡単なものではない。養殖水産物としての価値を高めて販売しなければ、多くの加工食品に価格面で押されて、低価格販売でわずかな利益を売るのでさえ容易ではないのが現実である。
養殖漁業とはいえ自然を相手の漁業である。海に屋根をつけて、水温管理を行い、四季に関係なく生産出来るものではなく、陸上養殖食品と同じように事が運ぶものではない。
よく言われることであるが「素人の思い付きが良い結果を生む」と言うことは、ある程度先の計算が出来ることに限られる場合が多いようだ。自然を相手の養殖漁業には思い付きは通用しない上にコストが掛かり過ぎて損をすることが多い。投資家や企業家が損に気付いた時に、手を引くようなことになれば、残された漁家を誰が保障するのだろう。被災で多くのものを失った養殖漁家にさらに大きな経済的災害を残す結果になりかねない。
それより養殖漁家が自力で復興できる実質的な支援をする事が、養殖漁家の復興力になる。自力で復興した仲間は、生涯同志漁家として支え合う事が出来るという姿を多く見てきた。
宮城県下の海苔養殖漁家に贈る言葉は
「自力復興を目指せ」の 一言だ。(治)

2011.05.16掲載

海苔のお話し(5)
宮城県「寒流のり」しっかり育て


これまで「海苔のお話し」を4回続けましたが、東北・関東に地震、津波による東日本大震災が発生して大変な災害が起こりましたので、被災地の皆様へのお見舞いを述べると同時に、被災地の現状の一部をお伝えすることにする事にしました。
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県は、
海苔、わかめ、かき、こんぶ、ほたて、ほや、ぎんざけなどの豊かな養殖漁場です。
いずれも、沿岸の養殖漁業で、わかめは柔らかい口当たりで香りもあり、岩手県に次ぐ全国2位の産地です。 また、かきも小粒だが味があり、広島県についで2番目の産地です。ぎんざけに至っては、全国の約90%を占める産地です。海苔の産地としても全国第5位です。

この恵まれた沿岸の養殖漁場が、あっという間に流されてしまいました。沿岸の海底には、押し流された家の一部、自動車、家財の多くが沈んでいます。被災市街地の多くは、道路を確保する程度の整理は行われていますが、沿岸の海底はこれから本格的な整理が行われるところです。濁った海底には、折れた材木や潰された自動車などの鉄板が刃物のようになって隠れています。潜水服が破れたり、怪我をしないように慎重に作業をしなければならない危険な海底です。
海底の復興作業が進むにつ入れて、養殖漁業再開の施設場所を何処の高台にするか、養殖漁業の同業者による共同作業が出来ないか、また新たな会社組織の養殖漁業が出来ないか−いろいろな事が考えられている。 海苔養殖にしても今年9月までには準備が出来る状態にしなければならない。
あまり時間がない。

高台の施設といえば、参考になるかどうか分からないが、韓国・ソウル市の郊外で漢江の岸辺の麻浦区に蘭芝島(ナンジド)というゴミの埋立地として有名なところがあった。日韓合同のワールドカップサッカーが行われた、ソウルワールドカップ競技場のすぐ側である。高い丘で、いまはワールドカップ公園に造成されて、テーマ公園になっている。かつてのゴミの山と思えない緑の公園である。
大震災に被害を受けてやむなく海底の瓦礫となった家や家財、自動車などもろもろのものを高い石垣の城壁を組んでその中に塩分を含んだ田畑の干潟土やセメントなどを混ぜて投入して固め、高台の施設団地が作れないかと夢みたいなことを考えたりする。

現実を見よう。宮城産海苔を
「寒流のり」という。
3月11日、宮城県の塩釜市で今年第13回目の海苔入札会が行われた。その結果を聞くために宮城漁協の担当課長に電話を入れたが送話記録によると午後2時11分であった。およそ10分程度で入札結果の印象と4月の入札予定、海苔の出来具合を聞いて受話器を置いた。担当課長の
「ようやく色のあるいいものが出来始めている。今年は生産が遅れていたから、これから4月一杯が追い込みだ」と元気の良い 声が耳に残っているうちに記事にして、テレビを点けて驚いた。
その結果が下の写真である。工場の建て家はなくなり、重さ20トンにもなる、海苔製造機械が無残に打ち砕かれて、逆さになり100メートル程先の林の近くまで流されていた。

(4月28日、宮城県・宮戸地区で撮影)

どうしようもない姿である。4月一杯まで何とかよい製品を作ろうと追い込みに入ったところである。
作業用建物から漁船、機械類一式、養殖資材など海苔養殖に必要な設備を揃えるためには、1億円相当の設備投資が必要になる。何とかしなければならない。効率の良い運営機構が出来ればよいのだが、よい方法が検討されることを願わずにはいられない。

「寒流のり」よしっかり育って欲しい(治)

2011.04.19掲載

海苔のお話し(4)
焼き海苔は「みどり色」


海苔の色は
本来濃い紫色である。黒くてつやつや輝いている海苔も、明かりにかざして見ると濃い茶色に見える。質の良いおいしい海苔は、海で養殖されているときに適度に紫外線に当たって旨み成分を蓄えているが、赤みのある成分(フイコエリスリン)がその分だけ多くなり、濃い茶色に見える。
 しかし、海苔に必要な海の中の栄養分(三態窒素を主にした栄養分など)が少なくなると栄養不足になり、赤い成分が減り次第に緑色になり、やがて透明に近い色になって流れてしまう。
通称「色落ち」というが、そのようになる主な原因は、海水中の窒素やリン分が海の中に必要な分量を超えて増えるため、これらをえさにするプランクトンが異常に増えて、海面が赤く染まる「赤潮」の状態になった時、海苔が必要とする栄養分をプランクトンが吸収して急激に減少して、栄養不足になった海苔は、黒褐色から次第に「色落ち」して黄色の海苔になってしまう。
 この赤潮も風や雨で海がシケると次第に治まり、再び、海苔に適当な栄養分が残ると黒く見えるほど回復してくる強い生命力を持っている。このような状態を、業界では
通称「色戻り」という。
 このように、海の中の微妙な変化によって海苔の状態も微妙に変化しているから、美味しい海苔を育てるために毎日海の状態を見ながら、干満の差で干潟が露出する漁場では支柱につないだ海苔網を海面より高く上げたり、下げたりして海苔の生育を見守る。また、常に海面に浮かばせながら養殖する沖合いの漁場では、海苔網に仕掛けてあるテコの応用で、海苔網を海面から浮かして海苔の質が良くするなど、寒中に気が休まらない作業がほとんど毎日続く。
 海苔が養殖されるのは、
毎年10月中旬から翌年の3月末頃迄である。この数年来気候温暖化の影響で、海水温度もやや高くなっている。海苔が気持ち良く育つ海水温度は、12℃から17℃の範囲であるといわれる。それより低くなるとのりの育ちが遅くなり、温度が上がると海苔の育ちは早くなる。16℃程度が「いい湯だナ」ということになる。じっくり育ち栄養塩さえあれば旨みをたっぷり含み、口の中に含んだだけで、甘いような口の中がキュッと締まる貝の味(コハク酸)まで感じる海苔に仕上がる。海苔には、かつお節の旨み成分のイノシン酸まで含まれているから、値段が多少高いと思っても質の良い美味しい海苔を食べることで嗜好食品としてのよさも感じる事ができるだろう。
 1993年に西澤一俊先生(理学博士・東京教育大学名誉教授)から頂いた本がある。
「体にいい成分がいっぱい! 海藻を食べる健康法」(朝日出版社刊)という表題で、色々な海藻の成分と健康維持の関係をまとめてた本である。その中に、「ノリを焼くのは美味しいからだけか」という一文があるので、それを紹介した方が解り易いようだ。

 『香ばしい磯の香り。日本料理には目で楽しませるものが少なくありません。そうした言い方をすれば、ノリは鼻で楽しませる食品のひとつかもしれません。しかし、ノリを焼くことのメリットは、美味しさを増し、食欲をかきたてる香りを醸し出すだけではありません。焙らないときのノリは、黒っぽい紫色や暗褐色をしています。このノリの色をつくっているのは、ノリに含まれる緑色の葉緑素、紅色の紅藻素(フィコエリスリン)、藍色の藍藻素(フィコシアニン)、そして橙色のβ−カロテンなどを含むカロテノイドです。
この四つの色素のうち、紅藻素と藍藻素は熱に弱いために焙るとほとんどその色が変わってしまうのです。つまり、焼きノリのあのいかにもパリパリとした歯ざわりを感じさせそうな青緑色は、軽く焼く程度の熱でも変色し葉緑素とカロテノイド色素が混ざり合って生まれるのです。
もちろん、焼くことでほかの変化も生まれます。ノリの細胞を包んでいる膜が、水分や成分、香りを通しやすいように変わるのです。ですから、口の中に入れると、うまみ成分や香りの成分がとけだし、あの独特の風味を感じさせてくれるのです。焼くことで表面が無菌的になるのも確かです。
もっとも焼きすぎはやはり、ノリのうま味も風味も損なってしまいます。黄緑色になるくらいにまで焙ってしまうと、味も苦味を帯びてきます。焙り加減、それがノリを美味しく味わう決め手だということは知っておきたいものです。ただし、近ごろ家庭で使われているノリは、赤外線などで焼きすでに製品化された“焼きノリ”。このあたりは、ちょっと残念な気がします。たまには、自分で焙っていただき、ノリの本当の醍醐味を満喫してみてはいかがでしょうか。』


ノリの焼き方も、かつてはガス台で炎に当てながら、焼き過ぎないように気をつけて焼いていたが、最近は
電子レンジ、オーブントースターで焼く方法が増えてきているようだ。
写真(下)のように、オーブントースターで焼く場合でも1分も経たない簡単な方法である。今年も、海苔乾物専門の小売店では、産地直送の新海苔が店頭に並ぶ頃である。ノリ乾物の専門がない地域ではデパートやスーパーで売られることもある。西澤先生お勧めのように、二つ折りにしてある新海苔(板ノリともいう)を買って、新海苔を焼いた香りと味を楽しむのも
「食を楽しむ」ことになるのではなかろうか。(つづく)(治)

@オーブンを暖める。
 
A折れ目をオーブンの上部角に当てる
 

B熱によって、曲がった海苔が開きます。

 

C半分づつ焼きます。約3秒程度。

 

D(左)焼く前の海苔。(右)焼き上がった海苔(緑色)。

 


2011.03.07掲載

海苔のお話し(3)
◎海苔の色は黒いのか


海苔に含まれている色素は「緑色のクロロフィル」「青い色のフィコシアニン」「黄色のカロティン」「赤(紅)色のフィコエリスリン」の四つの色素が中心になっている。これらの色素がほど良く混じり合って黒く見えるが、
本当は「濃い紫色」。そのため海苔は、コンブなどの「褐藻類(かっそうるい)」に対して
「紅藻類(こうそうるい)」と呼ばれている。古くは日本でも「紫菜(しさい)」といっていた。
海苔の色は、日照の強弱、水温の高低、栄養塩(海水中に含まれる三態窒素を主体にした栄養分)の増減によって常に変化している。海苔の細胞はなかなかデリケートなもので、含まれている4色素が生育環境の変化に応じていろいろな色合いに変化する。4色素の分量がうまく混じり合った時に、
黒に近い紫色になるようだ。また、デリケートな細胞は、壊れ易いが、栄養分が十分でしっかりした細胞に育っていると、黒くて艶のある海苔に見える。

海苔は、光合成によって出来た糖類に窒素、カルシウム、カリウムなどの元素を化合させてアミノ酸を作る窒素同化作用を行い、たんぱく質を細胞内に作り細胞分裂を行って生長する。ほど良く栄養素を含んで育った海苔には、ビタミン類が多く含まれており、ビタミンAは海苔1枚(約3g)と鶏卵4個分と同じ程度といわれている。また、ビタミンCも多く含まれている。
◎海苔と他の食品との成分量比較

また光の量が多いと、クロロフィル(緑)とフイコエリスリン(赤)は光の吸収率が良く赤茶色に見えるようになる。栄養分は十分に含んでいるが、見た目には海苔に対する一般的な印象である「黒色」ではなく、濃い茶色に見える。
業界では通称として「赤芽」といっているが、黒色の海苔に比べて含まれるアミノ酸の旨み成分が多くなっているから、本当は美味しいのである。

現在の海苔の販売状態を見ていると、「色が黒いこと」「穴が開いてないこと」が良い海苔の基準とされており、
旨み成分を多く含んだ「濃い茶色の海苔」、柔らかくてサクサク感が強く歯切れの良い「穴開き海苔」は消費者に買ってもらえないものとして、市販されていない事が多い。
本当の海苔の美味しさが解れば、いかに食卓を楽しくする事が出来るかを十分知らされていない消費者は可哀想である。(つづく)(治)

(写真)
海苔の色素(色素で合成したもの)右から@赤い色素・フィコエリスリン。A緑の色素・クロロフィル。B青の色素・フィコシアニン。C黄色の色素・カロティン。D4色混合の海苔の色・濃い紫色。



2010.10.22掲載

海苔のお話し(2)
◎海苔質のいろいろ


 海苔が育つ海の環境によって、海苔質に違いが出てくる。潮の流れが遅い海の中で育つ海苔は、細胞の皮膜が薄く出来ているため、海苔が柔らかく、食べた時に旨みを含んだ細胞が口の中で早く溶けるため、旨みの成分を早く感じる。業界では「口溶けがよい」という。しかし、潮の流れが速い海で育った海苔は、細胞の皮膜がやや強いため硬く感じ、口の中で溶けて旨みを感じるまでにやや時間がかかる。
 しかし、このような海苔質の違いをうまく利用すれば、美味しく食べる海苔の調理に幅が広がることになる。
口溶けが良い海苔は、手巻きすしなどのようにご飯などの水分の多い食材を食べる時に同時に利用すれば、サックリした歯ざわりで旨みを早く強く感じるから「おいしいさ」が味わえる。
 また、やや硬い海苔は、海苔巻きや食材を巻いて、しばらく(3〜4時間)時間を置いて食べる調理に使うと、食べる頃に程よい柔らかさになり、歯切れも良く、旨みも十分感じられる。

 また、海苔に大小の穴が開いた海苔がある。業界では「穴開き、丸(○)」といった格付けがされるから、穴が開いていない黒くて艶のある海苔よりも安い品質とされている。
ただし、この穴開き海苔にも2種類あって、養殖が始まって最初に摘み取られる海苔は海苔の細胞皮膜が薄く柔らかいため、産地で海苔を乾燥させるときに、熱によって海苔が縮んで穴が開く現象が起きるが、海苔質は良いものが多い。ところが商品にした場合、「穴が開いた海苔は質が悪いのではないか」という消費者の印象が強く売れ行きが良くなかった。
その結果、コンビニのおにぎりに使われる海苔は、穴が開かないようにやや厚めに抄き上げてある。そのため硬く感じるものが多い。海苔をおにぎりに直に巻いて販売したものは、「中のご飯が見える」という消費者の声があって、穴を開けないように厚く抄くようになったようだ。
最近は穴開きでも海苔質の良い美味しいものは、ギフト商品として使われるようになり、商品の中のシオリにその旨を説明している銘柄もある。

 このような柔らかくて美味しい穴開き海苔を使用した商品も出回るようになっている。小型のプラスチック角型容器に海苔1枚を8等分して35g入り(全形海苔約10枚分)で、1個700円程度で販売されている。これはお買い得

 もう一つの穴開きの種類は、海苔養殖時期の終わり頃に採れるもので、海苔の細胞皮膜が硬くなり、乾燥時に海苔の葉体が十分に重ならずに穴が開いてしまう海苔である。この頃の海苔質は全体に硬い海苔になり、また、栄養塩が少なくなった海で採れる事が多く、ガサ付いて見えるものが多い。
(つづく)(治)

(焼き海苔写真)
左・上質海苔。右・穴開き海苔。海苔は焼くと緑色になります。ちなみに、海苔のサイズは、19cm、21cmのやや長方形で、韓国、中国産もほぼ同じサイズ。
2010.10.06掲載

海苔のお話し(1)
◎海苔質と海流との関係


 海苔にも海の状態や海苔摘みの時期によっていろいろな性質のものがある。海苔は、見た目は色が黒くて艶のあるものが良い海苔とされている。
本来はそれが一番であるが、食べて美味しい海苔ということになると、そうとは限らないようだ。

 潮の流れ(海流)が遅く、潮の満ち引きによって潮の流れが起こる干満の差が大きい有明海のような
奥深い湾内と、潮の流れが速く、潮の満ち引きによる干満の差が少ない瀬戸内海で採れる海苔には、
海苔の質に違いが出てくる。

 潮の流れが遅く干潮と満潮の差が6メートルと大きく干潮に干潟が出てしまう有明海では、
6〜10メートル程度の棒(支柱)を海の中に突きたてて、干潟から2メートル以上高いところに海苔網を吊り下げて、海苔を養殖する。
そのため、満潮と干潮の潮の流れが緩やかな海中で海苔が育つため、海苔の細胞を包んでいる皮膜が薄く育つ。
そして、干潮の間は海苔網にぶら下がっている海苔が空気中にさらされて日光(紫外線)に当り、光合成作用(葉緑素を持った植物が太陽の光を浴びて外気の炭酸ガスを吸収し、これを消費して細胞内にブドウ糖、果糖、澱粉などのような糖類、いわゆる炭水化物を作り出し、副産物の酸素ガスを体外に放出する作用)を活発に行なって細胞分裂を行い生長している。

《支柱漁場風景》↑
引き潮で海苔網が海中から浮き上がった状態

(浮流し漁場)↑
支柱がなく海苔網の部分には波が見えない。


 また、潮の流れが速い海況の中で養殖される海苔は、海流に傷つかないように身を守るため、細胞の皮膜をやや厚くして育つ性質を持っている。
また潮の流れが速い海況で養殖されている産地も、かつては海岸に近い浅い海で養殖していたが、産業の発展で沿岸が埋め立てられて、やむを得ず潮の流れが速い沖合いの深い海で養殖することになった。そのため、海底にいかり(重石)を降ろし、海上に海苔網を浮かべて、海底のいかりから伸ばした綱に海上の海苔網をくくりつけて固定する養殖方法で
「浮き流し養殖」という方法が開発され今日に及んでいる。もちろん、干満の差は2〜3メートル程度あり、満潮の時には海苔網が海面より下になりますが、干潮の時には海面に浮かんで太陽光を浴びて光合成作用を活発に行っている。

こうして、冬場は、全国の海苔漁場で、海苔が空気中の炭酸ガス(CO2)を吸収し、酸素(O2)を放出する環境に良い活動を続けている。(つづく)(治)
2010.06.25掲載

◎佐賀県の旅館、ホテルが朝食に「佐賀海苔」使用

 佐賀県旅館生活衛生同業組合青年部(山口勝也部長)は、昨年12月から「佐賀だからこそ
「焼き海苔三枚」事業」
という事業に取り組んでいる。
これは、日本一の美味しさと生産枚数を誇る佐賀有明海産の「佐賀海苔」を佐賀を訪れる多くの宿泊客に味わってもらおうというもので、県内37の旅館、ホテルが実施している。この活動状況を全国旅館生活衛生同業組合主催の第13回「人に優しい地域の宿づくり賞」に応募していたが、6月初めに行われた審査の結果、応募32件(団体・24件、個人・8件)の中から最高賞の
「厚生労働大臣賞」
選ばれた。

朝食に出されている佐賀海苔は、和紙包装で焼き海苔10切り3枚入り、包装紙の表面には
「美味しい朝。佐賀だからこそのおもてなし」佐賀県旅館生活衛生同業組合青年部−と表記されている。


従来から旅館、ホテルの朝食に添えられている海苔は「味付け海苔」で12切り5枚入りが一般的。
しかし食べ残しが多かったため、
美味しい海苔を3枚程度が良いのではないかと、
「美味しさ、生産高日本一」の地元産「佐賀海苔」を宿泊客に提供することがおもてなしになるのでは
ないかと、実施に取り組んできたもの。
この企画は、佐賀県、漁協、JA、ANA、JRの協力を得ながら昨年12月20日から始めた。
山口部長(古湯温泉・旅館大和屋専務)は
「佐賀だから出来る、美味しいおもてなしを実施できたことが良かった。今年の新海苔からは、佐賀海苔の初摘みの生ノリをお客さんに味わって頂きたいと考えている」と佐賀ならではの企画を考えている。
佐賀県旅館組合青年部は、佐賀漁協南川副支所が開催していた「乾海苔味コンクール」にも参加して、佐賀海苔を味わっており、おいしさが良く分かっているだけに「佐賀海苔」を多くの宿泊客に味わってもらおうという企画につながったようだ。「地産地消」は、やがて、「地産全消」(全国消費)へと拡がって行くだろう。(治)

2010.04.08掲載

◎ 今漁期80億枚で海苔生産終わる

今漁期の海苔生産も4月下旬に終わる。
5月7日に全国最後の入札会が行われる。その入札会に出荷される予測枚数を入れても、今漁期に
全国で行われた入札枚数は
約80億枚と見られる。

海苔が生長する時期に晴天の日が少なく、海苔芽の伸びが鈍かったことや寒波のシケで海苔摘みが
出来なかった日が多かったことも原因の一つである。
しかし、もう一つの原因は
海苔養殖漁家が減っていることである。
昭和62年頃までは、全国で17,304戸の漁家があったが、平成2年のバブル崩壊以来、ギフト商品としての海苔の需要が落ちて、産地価格の低落とともに漁家の数も減り始めて、平成19年度の全国の
海苔養殖漁家は4,026戸と当時の4分の1になってしまった。
昭和62年から平成13年にかけては90億枚から100億枚の生産量であったが、その後は、90億枚から80億枚台の生産枚数になり、産地価格は次第に安くなって、漁家数の減り具合も毎年200戸以上になっている。
今年度漁期の生産枚数を見て、気象海況が原因とはいい難い一面を覗かせているのではないかという思いがする。さらに、
海苔1枚わずか3gであるが、多くの成分を含んだ食品である。
大いに食べてもらい、需要が増えると産地も活気付くのではなかろうか。
おいしい海苔をたくさん食べて、生産者の経営がうまく行く価格のしてもらいたいものである。(治)

2010.02.08掲載

◎「恵方巻き」で食べることの大事さを知る

 今年も2月3日を前に全国の小売店で「恵方巻き」の巻きすし販売が賑わった。
海苔業界ばかりでなく、米飯業界にとっては販売に活力を与える大きなイベントになってきた。その謂れはどうあれ、米飯の売れ行きが増えること、恵方が「西南西」であろうが、西北西であろうが、迷信とは知りつつ何か願い事をしながらものを食べることに、癒しを感じる向きもあるだろう。また、未就労者が溢れる不況の中で「食べられる」ということに有難さを感じることの大切さを自覚して欲しいイベントではなかろうか。
 あまり小難しいことは言いたくないが、日本の政治も産業もなにやら一般庶民とはかけ離れたところを見ているようで、「マニフェスト」というカタカナ語も目先をごまかす「政争の具」に使われているような気がしてならない。

 産業界も目先の売上げを追うあまり、産業に関わる多くの一次業者を犠牲にするような
「安売り競争」に明け暮れ、産業を支える基盤を崩壊させるところに追い込んでいる。日本の農業、漁業ともに今後の育成が困難な状態に立ち至るまで追い込んでいる姿には、空恐ろしさを感じる。
 下世話な言葉ではあるが「飯の種」を潰すような現状を振り返るには勇気が必要であるが、その勇気を取り戻すためにも、年に1度は「恵方巻き」でも食べて、「誰のお陰で食べられるのか」をじっくり味わうことが大切である。(治)
 写真は、真剣に願いをこめて「恵方巻き」を食べる子ども

2009.11.16掲載

◎早くも新ノリのポスター

新ノリの生産が始まった。
国内の海苔産地で最も早く新ノリを生産するのは宮城県である。仙台湾の沿岸にノリ漁場が広がっているが、10月末に始まってノリ摘みは、いまが真っ盛りである。
 全国に先駆けて、11月16日には
新ノリ入札会が開かれる。今年度の初ノリということで、全国から100名以上の海苔業者が買付に訪れる。宮城県の新ノリ入札の価格が、今後の入札価格の目安にもなる。
次いで20日には千葉県の新ノリ入札会が開かれる。その次は、東海、瀬戸内海を通り越して、九州の有明海を中心に27日から新ノリ入札会という段取りになる。


 その動きを見越して、早くも
「新ノリ入荷」とか「新ノリ発売」というポスターがノリ問屋の店頭を始め、小売店の店頭を飾ることになるが、今年のポスターが出来上がった(写真)。

 キャッチフレーズは「いろいろな味を包み込む 美味しさと健康の源−」というものである。ノリ1枚は約3.2グラム。業界では、
1日2枚で1日に必要な微量成分が摂取できるとPRしているが、平均小売値で1枚30円〜50円。我が身の健康維持管理費として毎日60円〜100円の投資が安いか高いか、それはあなたのお気持ちひとつ。(治)
2009.10.21掲載

◎新海苔養殖始まる

 平成21年度の新海苔養殖が始まった。
日本一早い新海苔生産地の宮城県では9月20日頃から海苔漁場に海苔網を張り込み養殖を始めた。順次南に向かって養殖が始められているが、日本最大の海苔養殖地区の九州・有明海一帯では、
10月18日、19日の2日間に行われた。

 有明海は、干満の差が6メートル相当ある、遠浅の干潟漁場で、その大部分が、沖合いの干潟に支柱を建て、支柱に海苔網をくくりつけて養殖する方法である。一定の高さに海苔網を吊るし、干潮には海苔網が空中に浮き、満潮には海水に浸かる養殖方法だから、海苔も海中で栄養分を吸収し、寒い冬の最中に空中に晒されて干上がり旨み成分を濃縮して蓄えるといった作業を1日2回繰り返すことになる。
だから、
「有明海の海苔は柔らかくて美味しい」といわれる。

 11月から2月一杯は、有明海に約64万枚の海苔網が広げられるから、佐賀空港に着陸直前の空から見ると幾何学模様の海苔漁場が見えて、感嘆の声が聞かれる。佐賀から福岡まではバスと列車で約1時間。お暇の方は、遠回りして冬の有明海を空からご覧になるのも一興かと思いますがいかがなものでしょうか。また、東京空港着陸直前には、富津から木更津にかけての海面にも海苔網の広がりが見える。

 ちなみに、新海苔摘みの最盛期は、宮城県で11月初め頃、九州では11月下旬頃になりそうである。
 新海苔養殖の出足はまずまずのようだ。今後の海況の推移を見なければならないが、旨い海苔が出来ることを念ずるのみ。(治)

2009.09.16掲載

◎有明海では支柱建て最盛期

 21年度の新海苔養殖の準備が始まっている。
九州・有明海は国内でも数少ない干潟漁場で、干満の差が大きい(約6メートル)漁場である。
この条件を活かした海苔養殖方法が、支柱を建て込み、この支柱に海苔網を張り込んで海苔を育てる
支柱式漁場。

 この支柱に張り込まれた海苔網で育てられる海苔は、干潮には空中にさらされ日光を浴びながら細胞内のアミノ酸の造成に励み、満潮には海中の窒素を吸収しながら細胞分裂を行い成長して行く。

 こうした日常の生活で、柔らかく、味わい深い海苔として育つ。そのための準備が始まっている。有明海の海苔漁場には、
最盛期に約64万枚の海苔網が張りこまれる。その支えになる支柱は、推定431万本になりそうである。この本数を9月1日から10月上旬に掛けて、約2,100経営体の海苔養殖漁家が1本1本手作業で建て込んで行く。

 この秋は、朝夕はやや冷え込むが、日中の日差しは真夏並みである。1漁家で約2週間掛けて自分の漁場に建てこんで行くが、毎年のことながら、この時期には熱中症、脱水症状で倒れる漁家も出る。海岸を走る救急車のサイレンを聞きながら、「親父さんでは?」と言う心配がよぎる時期でもある。(治)

2009.08.19掲載
◎海苔ギフト弱らす、梅雨と選挙

今年の東北南部、北部は、8月のお盆までに「梅雨明け」宣言を聞かなかったようだ。7月14日に「梅雨明け」宣言が出た関東地方でも、いつまでも梅雨気分の日が多かった。なんとも長い梅雨気分を愚痴っていたら「今年は、閏5月だよ」と言われて旧暦を見た。6月23日から7月21日まで旧暦の5月が続いていた。7月22日から8月19日まで旧暦の6月で、旧暦では梅雨時期になる。梅雨明けが遅れても無理からぬことである。

 ついでに、例年の海苔採苗時期を見ると、10月中は旧暦の8月中旬から9月上旬になる。水温が24〜25℃まで下がってくれるだろうか。30℃相当の海中で採苗、育苗を行うことにならなければ良いが−と要らぬ心配をしてしまう。

 今年は
「夏選挙」が行われる。8月30日の投票で解散風が吹き始めた7月初めから田舎では動きが見え始めた。東京の海苔業界に電話を入れると「長梅雨でギフトの売れ行きが思わしくないのに、8月に選挙と来ちゃー商売にならないよ」とご不満であった。ごもっともである。

 「中小企業の救済に頑張ります」と言われても、すべての経済状態がおかしいのに、どうにも出来ないことが分かっているから「そんなことより、もっと早く選挙をして、お中元のギフトが売れるように考えて欲しかったよ」と愚痴りたくなる。

 梅雨と選挙は、海苔のギフト販売にとっては鬼門である。

2009.07.06掲載
◎何事も「生産の抑制」は難しい

 今年(20年度)の海苔生産は4月末で終わった。全国の入札会で海苔問屋が落札した枚数は、
90億8,947万枚で約91億枚になった。
前号で89億枚相当だろうと予想していたがハズレタ。

 しかし、今年の海況はほぼ順調で不作の年ではなかった。その上、やや質の落ちたものが値を上げたため、産地も一所懸命海苔作りに励んだので、予想をうわまる90億枚の生産量に達した。たとえ安かろうと、1枚でも多く採れば目先の金にはなるから、「あまり採ると、来年も安くなるよ」とは言いにくいところがある。景気が悪くなると、すべてに売れ行きが悪くなる。

 売れ行きが悪いからと、生産を縮小して人減らしが出来る産業界はそれでも良いが、一次産業は、なかなかそれが出来ない。家内労働が多いから、減らせる人でもなく、生産を減少すれば、懐に即影響する。家内労働の労賃を無視して、少しでも目先の金になることをしなければならない。

 生産を抑制すれば、来年は少しでも値が上がるのではないかということも考えるが、仕方がない。経済状態が悪く、すべての消費が伸びないということで、少しでも安く販売して購買意欲を駆り立てようとする小売店も、それなりに努力している。その結果が産地の産物の値段引き下げに直結するのが、ますます数を稼がなければならなくなる。デフレスパイラル(不況の悪循環とでも言うか)はいつまで続くことやら。(治)

2009.04.27掲載
 4月も半ばになったら急に暖かくなった。
海苔漁場に張り込まれた海苔の養殖網もまばらになって、終漁期を迎えている。この漁期の全国生産枚数は、昨年度を3億枚上回る
89億枚相当になりそうである。
通常、海苔年度は、その年の9月から翌年の8月までとされている。

 今漁期の始まりに海苔養殖漁業者が271名減少し、その生産能力から推定すると約7億枚の減産が推定されるから、全国の生産枚数は90億枚に届かないだろうと予想していたが、その通りになってしまった。

 この数年来、国内需要も減退気味であったから、国内の需給バランスが良くなって来ているのかも知れない。ただ心配することは、国内の需給バランスが良くなるといっても、生産者価格はそんなに上がる気配はない、消費者価格も上がらないだろう。しかし、海苔質はグンと下がるだろう。上質の海苔は、
20年前に比べると半値になっているが、質の落ちる海苔が約20%値上がりしている。

 特売商品の海苔は質の落ちる海苔が使われているから、販売価格は変わらないが、海苔質がその分落ちることになる。また、一袋、一パックの中身の枚数が減ることもあるだろう。そこまでしなければ生・販ともに経営が難しくなっているのが現状である。
 経済不況で、何もかも
「値下げ」が謳われている。
コンビニまで値下げを標榜する状態である。値下げの裏には、そのしわ寄せで苦しんでいるところが多いことも忘れてはならない。(治)
2009.01.06掲載
◎今年の恵方は「東北東」恵方巻きで「景気」を招こう

2009年を迎えた。
どのような1年になるのか、予断を持たずに見守って行こう。
いま、新海苔生産の最盛期である。全国各産地の生産状態を見ると、取り立てるほど生産不振に見舞われているところもないようだ。年末までに全国の入札会で取引された枚数は
21億7,785万枚に達している。昨年同期より7,000万枚ほど多くなっている。年内の生産状態が良くなかった一昨年より5億9,149万枚多い。

この数年来、海苔の国内需要が低迷しているため、生産者価格も低迷からジリ貧に向かっている。需要に見合う程度の生産量に押さえられればいいのだが、養殖漁業は、陸の作物とは違って、海にビニールハウスを建てて、温度や塩分濃度、栄養塩の調節を行うことが出来ないだけに、生産数量のコントロールが効かない。

国内需要を盛り上げたいと、2月3日の「節分」に恵方に向かって巻きすしを丸かぶりして幸運を呼び込もうという
「恵方巻き」を海苔業界が普及し始めて、かれこれ55年になる。長い道程である。
昨年から、「海苔」の普及にもう一つ「日」が出来た。全国漁連のり事業推進協議会では、
毎月第3土曜日を「手巻き寿司の日」とした。
また、ごはんを食べよう国民運動推進協議会は1月17日を「おむすびの日」としている。2000年に日本記念日協会に登録している。これは、1995年の「阪神・淡路大震災」の炊き出しで「おむすび」に助けられた被災者の思いを込めたものだそうである。

「ごはん」という日本食の良さを「米と海苔」で味わいながら、2月3日には「恵方巻き」で「景気」を呼び戻したいものである。
今年の恵方は「東北東」。お忘れなく。

2008.10.29掲載
◎新海苔シーズン開幕

新海苔の養殖が始まった。
日本で最も早い海苔の生産地・宮城県では10月27日頃から
新海苔の摘み取りが始まった。来月の6日頃までには、県内全域で海苔摘みが始まる。次いで東京湾の千葉県、伊勢湾地区、有明海地区と順次始まり、瀬戸内海地区は兵庫県の網干、赤穂などの西播地区が早く、その他の地区では11月中旬を過ぎて海苔摘みが始まる。

 全国的に水温が高く、新海苔の養殖が始まるのは東北地区から順次西の方に下って来る。今年の出来を占うには早過ぎるが、概ね海苔芽の育ちは良いようだ。
 海苔も自然食品ではあるが、養殖技術の発展で、生産枚数は次第に増えてきた。ところが、平成に入って、バブル崩壊以来、贈答商品としての需要が減少し、産地価格が安くなり、生産の機械化でコストを引き下げながらなんとか生産を維持してきたが、生産コストの引き下げも限界に来て、採算が取れない海苔養殖漁家が増え、漁家の減少が大きくなってきた。

 ちなみに、今漁期は、昨年より約271名の生産漁家が減少する。この結果、単純に計算すると、平年作の場合でも、約7億枚の減産が予想される。そして、全国海苔養殖の平年作枚数は、約88億枚相当になりそうである。
 10年ほど前までは、100億枚生産、100億枚消費といわれたが、現在では95億枚相当の消費枚数と見られている。予想消費枚数より生産枚数が下回る時代に入ってきたようだ。

 日本のみならず世界で、
健康的な和食への見直しが始まっている。和食に欠かせない食材の一つとして、海苔消費増への回復を図ろうと、産地では需要促進を願っているのだが、なかなか、思うように進まないのが現実である。 「新海苔を食べましょう」。(治)
2008.08.18掲載
◎海苔は夏の食べもの

 今年は異常に暑いように感じる。こんなに暑いと、食欲も鈍りがちである。「本日、土用丑の日」は、
平賀源内が夏場の売れ行き不振に悩んだ鰻屋に頼まれて書いたPRのキャッチフレーズと言われるが、「○○の日」のはしりだろう。
 海苔業界も「海苔の日」を設けて、海苔のPRに一所懸命であるが、なかなか売上は伸びないようだ。このところ「ごはん食」の普及で「茶づけ」や「ふりかけ」はいくらか増えているようであるが、海苔を使う
量が少ないので、海苔産地では「いまいち」と言った感触である。

 ところで、
海苔は「夏の食べもの」ではなかろうか−と思っている。ビタミンB12は神経系に良いとされ、1日の必要量は約3マイクログラムと言われるから海苔(1枚約3g)3枚程度で良い。
タウリンは肝機能を良くし、心臓の興奮を抑える作用がある成分で、海苔1枚に36mg含まれていると
言われる。また、マンナン、キシランの食物繊維は16%程度含まれており、通じを良くして、体調の管理に役立っている。

 いずれも、西澤一俊(東京教育大学名誉教授)、野田宏行(三重大学名誉教授)両氏の著書によるものであるが、焼き海苔の香ばしさがご飯と良く馴染み、具材を考えて、おにぎりを始め、いろんな食べものを巻いて、包んで食べれば、夏の食欲と体調の維持には十分である。
 海苔産業界に身を置いて情報活動をやっている以上、これぐらいの宣伝はしておかなければ、申し訳ない。(治)
2008.07.23掲載
◎燃油高と海苔産地の不安

 異常な燃油高が漁業者の今後の大きな生活不安としてのし掛かっている。
7月15日には全国の漁業者が一斉休漁をして、燃油高への国の対応を求める活動を行った。
国際的な問題で、過去のオイルショックとは内容が異なっており、一時しのぎの保証金で解決できる
問題ではない。

 漁業者が最も恐れていることは、買い手まかせの入札制度で価格が決められている現在の販売システムでは、燃油高を自力で価格に反映出来ないことである。海苔養殖漁業者も同じである。
 消費者の需要が増えている状態であれば、休業で生産量を減らせば、ある程度の値上がりでカバーできるかも知れないが、需要が減退傾向を見せている現状だけに、値上がりすれば、需要減少に拍車をかけるのではないかという不安を抱えている。そのようなジレンマが漁業産地で聞かれる。

 海苔は、卵と同じように、小売価格の値上がりどころか低落を続けてきた。流通業界では「物価の優等生」という声も聞かれるが、それは、産地価格の低落の上に成り立っていることであり、産地では「有難迷惑である」と苦々しく思っている。
 しかし、卵は飼料の値上がりで、小売価格から業務用卵黄の価格を引き上げざるを得ない状態になっている。海苔も燃料という飼料が値上がりしているが、産地価格が値上がりしそうな気配は見られない。

 海苔産地が本格的に動き出すのは9月からである。海苔漁業者も動き出して燃料高の重みを一段と
感じるだろう。一体、どう対処するのだろうか。(治)
2008.07.11掲載
◎諌干のギロチン堤防が一般道に

諫早干拓の堤防水門を開放して、有明海の海況調査を行うよう佐賀地裁の判決が出た。農水省では
控訴の考えを明らかにした。第三者委員会で「開門して調査すべし」という結論を出したが、無視されたまま今日まで過ごして来た。

 当時の農水大臣は「結論が出次第開けて調査する」といったまま辞めてしまい、後任の大臣は聞く耳を持たぬまま過ぎている。

 2000年12月に海苔の色落ち被害が出て8年目になる。うやむやのまま言を左右にして風化させようというのではないか−と、産地では心配している。いま、諫早干拓の堤防は一般道路になり、吾妻から小長井まで車では時速40キロの指定速度で約10分の距離。佐賀から雲仙に至る、一般道路の近道になっている。入口の吾妻は、2001年の抗議ピケで、熊本の荒尾地区漁業者が詰めていた場所である。

 燃費節約のため、いずれ観光バスも通るようになるだろう。堤防道路を走りながら
「この道が、かの有名なギロチン道路でございます」などと観光ガイドの名所になるのではないかと思うと、有明海のムツゴロウも気分が悪かろう。

 諫干訴訟のこれまでの推移を見てきたが、やるべきことをやらず、やらなくてもよいことをやる−
「国と官僚」の姿が、諫干以外のいろんなところで、見え始めてきた。
高齢者保険の対象に近い年になったが、もう一度、若い頃を思い出して「国会デモ」でも仕掛けてみようかという思いが、どこかで疼いてきた。怒りを忘れて久しいが、血圧に注意して怒りたいものである。(治)
2008.06.25掲載
◎海苔のペットフードはどうか

 いま国会(参議院)で「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」の審議が行われている。
内閣提出の法律案で、提出理由は「最近における愛がん動物用飼料の製造及び流通をめぐる状況等の変化にかんがみ、愛がん動物用飼料の安全性の確保を図るため、愛がん動物用飼料の基準又は規格の設定、当該基準又は規格に合わない愛がん動物用飼料の製造の禁止等の措置を講ずる必要がある」というものである。

 ペットフードの安全性を法律で護らなければならない状態にあるようで、生き物の安全な生活を保護することは大切なことである。それにしても、昨今の犬、猫を始め、人に飼われている動物に限らず、歩く姿を見ると太り過ぎが多いようで、ペットもメタボが増えたようだ。「猫が狸で、犬が豚に」なったと言うと動物愛護の方に叱られるかも知れないが、栄養過多には注意されたほうが良い。
 いま、
海苔を利用した「ペットフード」の開発が考えられている。6年程前に試作品を頂き、我が家の犬に与えたところ、それまでのペットフードより良く食べた。しかし、日本で発売すると、
何もかにもが価格競争だから、採算に合わないそうだ。

 海苔も人が食べない質のものがある。その成分を生かした商品開発も進んでいるが、コストが高くつき、商品化は大変なようである。愛がん動物の健康維持のためにも海苔の活用を考えてもらいたいが、ほどほどの値段で販売できるようにならないものか、知恵を出したいものである。(治)
2008.06.10掲載
◎海苔の需要拡大にあの手この手

海苔の消費量が少なくなっている。
10年ほど前までは、100億枚の生産と消費枚数があると言われていたが、生産者の顔の見える農水産物が消費者の人気を得て売れるようになって以来、海苔の消費が減少し始めている。と同時に、入札価格が安くなり、海苔養殖漁業者は採算が合わなくなり廃業する漁家が増えている。漁連調査による漁家数は平成8年度の9,017軒から平成18年度は6,242軒と約10年間で2,775軒(30%)の海苔漁家が減少している。毎年減少が続いており、次の漁期(10月)までには、6,000軒を割り込むのではないかと心配する声もある。

 生産団体では、何とかして海苔の消費を増やし、産地価格が少しでも高くなるようにしたいと、
「海苔の日」を制定して年一度の消費拡大を図ってきた。それでも間に合わないと、今度は、毎月第三土曜日を「手巻き寿司の日」として、毎月消費促進を図るようにした。

どの程度の効果があるのか、今後に期待する他ないが、かつて、「1日海苔2枚を食べましょう」と呼びかけた時期があった。最近はその声も聞こえなくなったが、ちなみに、焼海苔1枚(3グラム)の成分は、水分・0.2g、たんぱく質・1.2g、脂質・0.1g、糖質・1.3g、繊維・0.1g、灰分・0.2g、カルシウム・12mg、リン・18mg、鉄・0.4mg、ナトリウム・4mg、カリウム・72mg、ビタミンA効力・390IU、ビタミンB1・0.03mg、ビタミンB2・0.10mg、ナイアシン・0.3mg、ビタミンC・2.9mgなどの成分を含んでいる(平成2年刊、女子栄養大学出版部発行「栄養データブック」より)。
 2枚と言えば、単純に2倍である。他の海藻類より成分含有量は多い。
健康には良いはずであるが、いまの食生活には合わないのか。何か良いPRの方法はないものか。
(治)
2008.05.27掲載
◎全国86億枚で、海苔生産終る

 4月末で全国の海苔生産が終った。
全国の入札会で販売された海苔の枚数は
約86億2,831万枚であった。
昨年より9億3,949万枚少なかった。昨年10月の海苔種付け時期の水温が高く例年に比べて約2週間種付けを遅らせたが、生育時期の水温が海苔の生長に適していたため、順調に育った。

ところが、瀬戸内海地区は、海中の栄養分を大量に吸収する珪藻プランクトンが増えて、海苔の生育が十分ではなく、生産数量も少なかった。さらに、3月後半には、生産の最盛期を迎える兵庫県の主産地明石海峡で貨物船の衝突事故による沈没船から大量の燃料オイルが流れ出し、神戸市から東二見と
対岸の淡路島に至る広い海苔漁場で海苔網を引揚げ、生産不能になる事態が発生した。
この結果、瀬戸内海地区の海苔生産枚数は、昨年の54%に減少した。これが、今年度海苔生産枚数の大きな減少につながった。

この3年ほど前から、瀬戸内海の海苔生産状態が思わしくないようだ。珪藻プランクトンの発生が早く、赤潮状態にならないが海苔の生育に必要な栄養分を吸収してしまい、黒い海苔の生産が少なく、安い海苔になってしまうので、生産を早めに終らざるを得ない状態が続いている。瀬戸内海の海苔養殖が
安心して行える海況になるにはどうすればよいのか、十分研究する必要があるようだ。(治)
2007.12.14掲載
◎来年の恵方は「南南東」です

全国で新海苔の生産が始まった。
今年の出来具合は、ほぼ平年並みで推移しているようだ。
暑さ続きで、全国的に海苔養殖はやや出遅れたが、急速な寒気の訪れで、水温もほぼ適温になり、

海苔芽の育ちも順調で、昨年より出来の良いスタート
になっている。
ただ、西日本地区は雨量が少なく、海苔に必要な海水中の栄養塩(主に窒素量)が何時まで維持できるのか、やや心配のようである。しかし、今生産されている海苔は、「色良く、味良し」といったものが多いようだ。

 ところで、海苔の需要に眼を向けると、かつてのような家庭需要は少なくなっている。海苔業界では、
2月3日の節分に「恵方に向かって巻すしの丸かぶりをして、新年の幸運を呼び込みましょう」と、家庭需要の増加を呼びかけている。昨今は、すし屋さんもコンビニエンス・ストアも
「恵方巻」を売り出して、家庭でのイベントとして楽しんでもらおうという売り方をしている。

 海苔の業界にとっては、ありがたい需要喚起である。しかし、こうした需要喚起にも関わらず、年間を通した家庭での需要が今一つ伸びない。農家も米食の普及が今一つで、ごはん食の普及に力を入れている。「ごはんと海苔」は和食の定番である。海苔は、野菜や魚のような副食の惣菜ではなく、副惣菜の存在である。包む、焼く、巻く、振りかける、煮る、揚げる−と料理の素材としては多様性を持っている。健康に必要な微量成分は多く含まれている。そこのところをもう少し理解して貰い、食生活に潤いを持たせて欲しい−というのも海苔業界の願いである。

 来年の恵方は「南南東」である。海苔業界も需要拡大の願いを込めて「恵方巻の丸かぶり」で、業界の幸運を願わなければならないようだ。(治)
2007.10.27掲載
◎いよいよ新海苔のシーズン

 いよいよ新海苔のシーズンに入った。
いつまでも暖かい日が続き、特に九州・有明海では、海苔採苗(種付け)が遅れ、例年に比べて
2週間遅れの11月下旬になって新海苔摘みが始まった。今年はいつまでも水温が下がらず、
海苔の成育に都合の良い水温・24℃以下になるのを待って、10月中旬に採苗を始めた。

 有明海も200年の大不作以来、なんとか平常の海苔養殖が続いているが、内心には大きな不安を抱えている。高水温が続くのも地球の温暖化の所為だろうと言いながらも、諫早干拓以後の海流の鈍化への疑念も脳裏にある。赤潮は大きくならないまでも一年中続いている。海苔養殖漁場の一部は、諫早湾の干拓以来、有明海の中で最も早く色落ちする海域になっている。

 先日、諫早湾干拓が終わり、現場で完成祝賀会が行われた。「動き出したら止められない」のが政治事業である。干拓された農地がいつまで使えるのか疑念を持つ関係者も多い。閉め切り堤防は国土交通省に移管され、島原への近道になりそうである。やがて、観光バスも通るだろう。「いま走っている道が、あの有名なギロチン道路でございます」と、うぐいす嬢の観光案内も聞かれるのではなかろうかと
思うと、海苔に携わるものとして、複雑である。

 それにしても、今年も海苔は育っている。古代から大きな環境の変化にもめげず育ってきた植物で
ある。しかし、その本音を聞いて見たい気もする。(治)
2007.10.23掲載
◎暑くて海苔養殖作業遅れる

10月の初めまで暑い日が続き、残暑というより「何時まで夏が続くんだ」といった状態で、海の水の温度も一向に下がらず、海苔の種付け作業が全国的に1週間近く遅れている。

日本最大の海苔産地・有明海一帯も、日照り続きで10月上旬まで暑い日が続いた。そのため、海水温が下がらず、有明海の水温は
平年値を2℃以上も上回る状態が続いている。

人間にとっても、気温が2℃も上がると体感温度はそれ以上に感じるから、海苔にとっても、暑すぎて
体調がおかしくなるのは当然である。
したがって、海苔の気持ちが少しでも分かる海苔漁家は、水温が下がるのを待って海苔の種付けを始めようと、今年は、例年より15日から19日も遅い、
10月25日から27日に掛けて、海に海苔網を張り込み種付けの作業に入ることにしている。
例年であれば、海苔摘みが始まる直前である。そのため、年内に生産される秋芽の生産数量が昨年
よりやや少なくなるのではないかと見られている。
しかし、これまでの生産数量が多かったため、海苔業者の間には、在庫も多く、市中の海苔小売価格に影響することはないようだ。

この10月から、食品の値上げが始まっているが、海苔については、そのようなことはなそうである。
海苔の全国平均価格は、年毎に安くなる傾向が続いている。海苔養殖漁業者にとっては、寒い冬の
海での仕事にもかかわらず、値段が上がらないのは、つらいことである。
ある海苔業者が「海苔は物価の優等生だ」と言ったのを聞いたが、生産者の立場からいうと
「優等生であることより、当たり前の生徒で良いんだ」ということである。(治)
2007.10.15掲載
◎高水温に悩む「海苔種付け」

この数年、海水温が次第に高くなっており、海苔の種付けが遅れがちになっている。

通常、海上での海苔の種付けや育苗に適した海水温は
24℃以下といわれる。10年位前までは、10月1になると全国的に24℃以下になって、安定して海水温が低くなる傾向が見られ、東北地区では、9月下旬から海苔の種付けが始まっていた。
ところが、近年は10月初旬になっても24℃以下になることが少なく、10月上旬の後半(7〜9日頃)に海上での種付けや陸上で種付けして冷蔵保存していた海苔網を張り込む傾向になっている。

今年も、どうやら水温の低下が遅くなる見通しで、東北地区を除いては、
10月中旬の前半
(10〜13日頃)
になりそうな状態である。
種網を張り込むためには、出来れば大潮から小潮に向かう時期が良いようだ。
したがって、海水温の下がり具合と潮時を考えながらの張り込みになるから、一番頭を悩ませる時期
である。
九州の有明海では、9月下旬でも26℃〜27℃近い水温が続いている。
平年に比べると
3℃以上高い。
有明海は、ほとんど野外採苗といって、海苔網に海苔の種が潜り込んだ、かき殻をビニール袋に
2〜3個入れて30枚重ねた海苔網に吊るし、海上に張り込んで種を付ける方法を行っている。

それだけに、海水温の推移が多いに気になるところで、とりあえず、10月11日以降に採苗を行う考えであるが、果たして、その頃までに水温が下がるかどうか、潮時のタイミングを考えながら、気を揉んでいる状態だ。海苔作りの難しさを痛感する。(治)
2007.09.12掲載
◎有明海では新海苔養殖の準備始まる

九州・有明海では、10月中旬から始まる新海苔の採苗(種付け)に備えて、
干潟の漁場に海苔網を張り込む支柱を建て込む作業が始まった。
9月1日から漁場への支柱建て込みが解禁されたが、干潮時を避けての建て込みになる場合が多いからから、午前中や夕方の日差しの弱い時間を見計らっての作業になることが多くなる。
(同様記事は2006年9月12日付けこの欄に掲載)

9月下旬までには大方の漁業者は支柱の立て込みを終えそうである。10月に入ると中旬までには海苔網を張り込み、新海苔の種付けが始まるが、その時期の海水温が問題で、通常23℃以下が良いが、このところの温暖化で、この温度までに下がるのが遅れている。9月10日現在の有明海の水温は、平均で27.5℃相当である。朝晩は少し涼しくなっているが、あと一月程度だが、5℃相当下がってくるのかどうか、漁業者は不安顔である。

毎年の気象海況に大きく影響される天産物だけに、ベテランの海苔師が

「海苔作りは、毎年1年生たい」
という言葉に重みを感じる。
さて、今年も味の良い海苔が生計を維持できるように採れるかどうか、あとひと月が勝負どころである。
(治)
2007.08.17掲載
◎海苔需要促進に悩む海苔業界


平成18年度(平成18年10月〜19年4月まで)の全国海苔入札で海苔商社に買い付けられた海苔の枚数は約95億枚
しかし、全国の海苔業者が昨年から抱えている在庫海苔は、約40億枚とも言われているから、今年の買い付け分を含めると、約135億枚に達する計算になる。

この内、1年間に消費される海苔の枚数は約85億枚程度と見られている。さらに、次年度に生産されるまでに保存される必要在庫枚数は25億枚程度と見られているから、25億枚程度が生産過剰と言うことになる。
という数字を流通業界のいろいろな業者から聞く。「もっと多いだろう」という業者もいる。これらの数字は、非常に漠然としているが、流通業者が同業者間の話から生まれ出る数字で、信用できない数字として否定することも出来ないものがある。

いま、一般的には、「海苔の消費量は100億枚相当」といわれているが、業者の販売状況から見て
(主に業者の在庫数量から類推して)85億枚程度が実数に近いような実感を感じさせる。
それほど、消費数量が少なくなっているのが現実ではなかろうかと感じている。なぜか?。という業界の市場調査は行われていない。販売量が少なくなり、在庫が増えたからという理由で、海苔産地の入札価格は年毎に低下している。

生産者は、毎年減少している。高齢化で後継者も育てられず自然現象している部分もあるが、海苔養殖漁業の将来に見切りをつけて辞めていく海苔養殖漁家も多い。

この現状に歯止めをかける行動を早く起こさなければ、日本の食生活の中から海苔の陰が薄れることになりそうである。
海苔を食材の一つとして生かしてもらえるシェフや食品メーカーの出現に期待したい。   (治)
2007.07.27掲載
◎転機に立つ海苔輸入

平成19年度の韓国、中国から輸入される海苔の割当て枚数が2月に決まった。
割当て総枚数は7億4,100万枚で、韓国から輸入できる枚数は4億3,600万枚。中国の割当て分は2億4,000万枚。残りの6,500万枚は中国、韓国のいずれからでも輸入できる枚数である。

特に、海苔業界には、韓国から2億6,100万枚(内・味付け海苔1億3,900万枚)の輸入枚数が割当てられた。中国からは1億8,000万枚(内・味付け海苔2,000万枚)の輸入枚数が割当てられた。

そして、韓国海苔輸入のための入札会が、5月15日〜16日まで、韓国のソウルで開かれた。ところが、韓国から出品された乾海苔の枚数は、輸出できる乾海苔枚数・1億2,200万枚より1,709万枚少ない1億0,491万枚であった。

入札の結果、売買が成立した枚数は2,832万枚で、出品枚数の約27%であった。1昨年までは全量成立していたが、昨年約70%の成約にとどまり、平成5年から韓国海苔輸入が再開されて以来初めて100%成立しない事態が起き、異変を感じたが、今年は、30%にも満たない成立枚数で、
韓国
海苔輸入に大きな転機を感じさせる動き
であった。

ちなみに、韓国特有の「塩味」味付海苔については、輸入割当枚数をほぼ100%契約成立している。
日本でも「塩味」味付海苔の需要は安定しており、ハングル表示の商品も
増えている。
そして、中国は、5月21日に、日本の海苔業界に対して、「入札会を中止したい」と一方的に通告してきた。
今年の中国は過去最高の約30億枚の生産枚数に達したと見られるが、国内需要の伸びが大きいこと、輸出が伸びていることが大きな要因だと見られている。日本産海苔質に似ており、価格も安いといわれていたが、「元高」が続いており、輸送費、関税など諸経費を加算すると、日本の海苔が安くなっている現在、業者にとって利幅が少なくなっていることや安心・安全の面で今一つ気が進まないのが原因といえよう。


輸入海苔に大きな転機が訪れているようだ。(治)
2007.06.28掲載
◎平成18年度の海苔生産終る

平成18年度の海苔生産は5月10日頃に終わった。

海苔の生産年度は、その年の9月から翌年の8月末までである。
したがって、表記する年度は生産が始まった年を基準にするため、平成18年に生産が始まったから、
平成19年5月に生産が終わっても、平成18年度ということになる。

さて、生産が終わって見ると、全国で入札に出品して販売した枚数は、
95億6,779万枚
になった。昨年に比べると3億7,622万枚少ない。

しかし、海苔1枚当りの平均価格は、8円65銭で前年より61銭安くなっている。
通常、天産物は自然の影響を受け易く、毎年生産状態は不安定である。
そのため、前の年より生産数量が減ると、値上がりするのが当たり前であるが、前の年より生産量が
減ったのに安くなっている。
前の年の売れ行きが悪く在庫が多いことが大きな原因であるが、このところ、海苔の売れ行きが
良くない。
10数年前までは、お中元、お歳暮の売れ行きはデパート、スーパーでは1番から3番目に多い商品
であった。最近では、7番から10番目に落ちている。

いま、海苔業界では、何とか売れ行きを伸ばそうと、知恵を絞っているようだが、妙案が浮かばないようだ。「どなたか、お知恵をお貸し頂けないだろうか」と、
賞金を出して呼びかけたらどうだろう−と思うのだが、その知恵も浮かばないか・・・。 (治)
2007.04.25掲載
◎いよいよ新海苔シーズンF
 《海苔の色》

海苔は黒くて艶のある海苔が、おいしい海苔の見分け方の基本として一般に伝えられている。
もちろん「黒色で艶のある、ぴかぴか光った海苔」が美しくて美味しそうだ。
しかし、必ずしもそうとは言い切れないところに、
美味しい海苔選びの難しさがある。

海苔は本来、4つの色素によって構成されている。
@赤色・フィコエリスリン(紅色の色素タンパク質。熱に弱く、湿気に強い)。
A青色・フィコシアニン(青色の色素タンパク質。熱に強い)
B緑色・クロロフィル(葉緑素。熱に強い)
C黄色・カロチン(黄色〜橙色。不飽和炭水化物でビタミンAの供給源)

海苔は紅藻類といって、緑藻類(アオノリ、アオサなど)、褐藻類(コンブなど)に比べると、

本来赤味を帯びた海藻
である。
赤、青の色素蛋白質は太陽に当ると光合成によって光のエネルギーをクロロフィルに伝えて光合成を
さらに進める役割があり、旨味の成分を増やす働きをする。

その結果、太陽の光を十分に当て深みのある海苔作りをすると
やや赤味がある海苔になる。
したがって、干潟に支柱を建てて網を繋ぎ、潮の干満による日光欲をさせている産地の海苔に美味しいものが多いといわれる。

また、焼き海苔が「緑色」をしているのは、熱に弱い赤の色素が消えて、葉緑素が残ってしまうためで、
これを湿気の多い場所に置くと「赤色」の色素が多くなってしまうから「赤紫」に色が変わるのである。
写真は、海苔に含まれる4種類の色素(着色料で合成したもの)。
海苔に含まれる4種類の色素
2007.03.27掲載
◎いよいよ新海苔シーズンE
 《機械化進む海苔抄き》


昭和36年頃までは、海苔抄きも、手抄きで田んぼの中に掛け棚を並べて天日干しで仕上げる風景が
多かった。
ところが40年代に入るころから、回転式の抄き機械が作られ、乾燥小屋に炭火を入れて抄いた海苔を掛けた棚を回転させながら乾燥する方式が始まった。
やがて炭火が灯油に変わり、乾燥機械が出来、昭和49年から52年にかけて、摘んだ海苔を刻み、
パイプで機械に送り込み、自動的に抄き枠に海苔を流し込んで抄き上げる
「海苔自動製造機」が製作された。
当時、海苔自動製造機の値段は1台300万円相当であったように思う。

新築の家1軒分に相当するような感じであった。

その後、海苔の製造工程に係るいろんな機器類が開発され、現在は、摘み取った海苔を大きな攪拌水槽に入れると、海苔を真水で洗いながらゴミを取り除き、刻み、大型の全自動式海苔製造機に自動的に送り込み、その日に摘んだ海苔質に合わせて乾燥できる
システム化された海苔製造機が使用されている。
海苔製造機の抄き部分(佐賀有明海で)
大城憲治氏撮影

こうした海苔製造設備一式を揃えるには、やはり現在の価格で、新築1軒分に相当するようだ。
海苔の製造原価は上がるにもかかわらず、産地価格はなかなか上がらず、海苔漁家は減る一方
である。
2007.03.06掲載
◎いよいよ新海苔シーズンD
 《夜中の海苔摘み》


新海苔シーズンもいよいよ終盤に差しかかった。
3月一杯で海苔摘みを終わる産地が増えているが、4月中旬まで続ける産地もある。

1月から2月一杯が最盛期で、潮の干満によって作業時間が前後するものの、
午前2時ごろの真夜中から始める漁家もある。
全体に午前5時ごろには海苔摘みを始めるが、寒中の暗闇の海苔漁場で、頭につけたカンデラの明かりを頼りに「海苔摘み機」を操りながら、およそ3時間、黙々と海苔摘み作業が行われる。
しかも、この作業を夫婦で行っている漁家が意外に多い。

夫婦が摘んで帰ると、海苔抄きの作業場には、両親が待ち構えて、海苔抄き機械から出てくる海苔の
出来具合を見ながら、品揃えをして箱詰め作業をする。
一家総がかりの作業は午前中一杯行われる。

↑夜中の海苔摘み作業(佐賀有明海の漁場)
                  大城憲治氏撮影
出来が良くて、1枚30円以上の入札値段で落札される時は、つらい作業にも耐えられるが、海の状態が悪く質が落ちて1枚10円以下で落札される時がシーズン中で一番つらい時である。

今年は、暖冬で上質の海苔が少なかった。枚数は昨年並みになったところもあるが、生産枚数が少ない産地では、ひとしお厳しい年になりそうだ。(治)
2006.11.07掲載
◎いよいよ新海苔シーズンC
 《野外で採苗する方法》


大型の水車に30枚から50枚の海苔網を撒きつけて回転させながら、水槽に吊り下げた海苔種が入っているカキ殻から放出される海苔の種苗を網に付着させる陸上採苗に対して、30枚ほど重ねた海苔網に、海苔種が入ったカキ殻を2枚ほどビニール袋に入れ、30個ほどを等間隔に吊り下げ、それを海上に広げてビニール袋から出てくる海苔種を30枚重ねの海苔網に満遍なく付着させる採苗方法を
「野外採苗」と呼んでいる。

いま、この方法で採苗を行っているのは、
九州の有明海だけに見られる。
干満差6メートルの遠浅の干潟が続き、24時間のうち2回、3〜4時間海苔網が空気中にさらされ、
自然の力に任せた海苔種の網への着生を行うことは、

海苔本来の姿による生育
を助ける養殖方法でもある。

10月7日〜8日にかけて、30枚重ねの海苔網に種を付着させ、3日〜4日間でビニール袋の海苔種を取り外し、生長させながら、15枚、5枚、3枚と決められた養殖漁場に広げて行く。
この作業の段階で、3分の1の種が着いた海苔網は、脱水してビニール袋に詰め、冷蔵庫に入れ−25℃の冷蔵庫に入れる。これは、いま張り込んで生長させた海苔が、海況の変化で生産出来なくなった時に取り替える予備の網である。
これを
「冷凍網」と呼んでいる。

10月末までに有明海全域でこの作業が終わり、あとは、海苔の生長を待ち、
10センチ以上に生長したころから海苔摘みが始まる。

「新海苔」「初摘み」である。
10日頃から有明海全域で新海苔摘みが始まる。

写真は、野外採苗風景。撮影・大城憲治氏
2006.10.20掲載
◎いよいよ新海苔シーズンB
  《陸上で採苗する方法 》


前便で紹介した、カキ殻に海苔の種を潜り込ませ、秋口に熟成して殻胞子(かくほうし・海苔の種)を放出したところを海苔網に付着させることを「採苗」というが、その方法に2つの方法がある。
その方法で、全国で多くの産地が取り入れているのが、「陸上採苗」という方法である。

3m四方、深さ1m程度の防水シートの水槽を作り、海水を入れる。その中に果胞子で黒くなったかき殻を300個ほど吊るし、殻胞子を水槽に放出させる。水槽の上に直径3mほどの水車(鉄輪)を置き、水車に海苔網を30〜50枚ほど巻きつけて海水の中を潜らせながら回転させて、海水中に放出された海苔の種を海苔網に付着させる方法である。

海苔種が、海苔網に十分付着していることを知るためには、海苔網の一部を5cmほど切り取り、顕微鏡で着生状態を視認して確認する。水車を回し始めて20分程度で着生する。着生が確認されたら直に水車から取り外して別の水槽(約2.5mと約5mの長方形)に移し、海苔種の網への着生を安定させる。
取り外した水車には、直ちに新たな海苔網を巻きつけて採苗を始める。
この繰り返しで、午前6時頃から8時過ぎまで、採苗が行われる。
海苔の生理状態は不思議なもので、太陽が高くなり、水温が上りだすと殻胞子の放出を止めてしまう。

海苔種が付着した網は、海水温が23℃以下に下がった頃合を見て海上に張り込まれて、海苔の生育を促す「養殖」が始まる。

10月中旬頃
になりそうだ。
しかし、有明海の産地では、
「野外採苗」という方法が行われる。10月7日〜8日にかけて始まった。(治)
写真は、兵庫県のり研究所で始まった、陸上採苗の風景=撮影・大城憲治
2006.10.10掲載
◎いよいよ新海苔シーズンA
 《出番を待つ海苔の種》

全国の海苔産地では、海苔網に海苔の種付けをする「採苗」という作業
が始まっている。
「海苔の種」は、春先から秋口にかけて、主に海底の貝殻の殻に潜り込んで生活している。
そして、秋口の水温が冷え始める頃、種を海中に放出する。
このような、海苔の生活循環(ライフサイクル)の決め手である、貝殻での生活部分を発見したのが、

イギリスの海藻学者キャサリン・M・ドリュー女史
である。

おかげで、春先に海苔の種になる胞子を貝殻(かき殻が多い)に植えつけて、秋口まで水槽で培養(育てる)し、種が放出される秋口に、種の付いたかき殻を水槽に並べて、海苔網を重ねて巻きつけた、
大きな水車をぐるぐる回しながら海苔網に種を付ける方法や海苔網に20センチ四方のビニール袋を取り付け、ビニール袋の中に、海苔種の付いたかき殻を1〜2個入れて、その網を海に張り込む方法などで、種付けを行う養殖技術が生み出された。
これを「採苗」といっている。
海苔種も、まだ、水槽の中に吊るされて、出番を待っているところが多いが、写真のように、海苔の種が増えて、かき殻が真っ黒になっている。

 
この種が、海の中に飛び出し、海苔網に付着して、細胞分裂をしながら成長するが、その年の回りの海況が成長に大きな影響を与える。
ドリュー女史のおかげで生み出された、日本の海苔養殖方法を受け継ぎ、産業として今日まで発展させてきた技術は、何としても守り継がなければならない。
そのためにも、森を守り、健全な生活環境を守り、
海を守る努力が大切である。(治)

2006.09.12掲載
◎いよいよ新海苔シーズン@
  《有明海で支柱建て始まる》


九州の有明海では、海苔養殖の網を海上に吊るすための「支柱建て」が始まった。9月1日から始まり、中旬頃まで続くが、天候を見ながら、家族総出の作業になる。

遠浅の干潟漁場に支柱を立て込んで海苔網を張り込む養殖漁場があるのは、
有明海が全国最大規模で、伊勢湾、東京湾などに点在している。

有明海の海苔養殖漁場では、海苔網10枚と8枚を張り込んだ広さを1コマと呼称しているが、10枚の海苔網を張りこむために支柱が約66本必要になる。
有明海全体に張り込まれる
網の枚数は、約75万枚でこれを支える
支柱の本数は約450万本
になる。

10月中旬から3月中旬までに飛行機で佐賀空港に着く場合、低空飛行の空から見る有明海は、一面を海苔網が覆い、かすり模様に見えるようになる。
特に、10月中旬頃までは、海苔の種付けが終ったばかりで、海苔網の赤、緑、白、黄色が織り成す「網模様」は、なんともいえない、
有明海の新海苔シーズンの風情を感じさせる。

写真は、支柱建てをする海苔漁家
(10日佐賀・南川副地区で)
支柱建て作業も間もなく終わるが、10月7日以降には新海苔の種付けが始まる。
7日以降に九州を訪れる向きは、良ければ佐賀空港を利用されると、「これが海苔産地か」と感歎されることと思うが、如何なものでしょう。(治)
2006.08.23掲載
◎ノリの保存は・・・

海苔は機械で製造される。
手漉きで天日干し−の製造風景は見ることが出来ない。
ごく一部の産地で、海苔販売業者に頼まれて、僅かな枚数を製造することはある。

今は大型の機械で、
1時間に6千枚以上の海苔が製造されている。その機械から抄き上がって出てくるときの海苔の水分量は約12%。それを10枚づつ二つ折りにし、10束まとめてひと括りにし、36束(3,600枚)を箱詰にして入札会に出し、海苔販売業者が買い付ける。

海苔の入札会は、生産された海苔の鮮度が高い生産期間中(11月〜4月)だけに開かれる。それを買い付けた海苔販売業者は、次の年の生産時期までに売りつなぐため、買い付けた海苔は、品質が落ちないうちにもう一度乾燥させなければならない。この再乾燥の段階で、
海苔が含んでいる
水分を3%程度までに乾燥
させる。

これを寿司海苔、焼き海苔、味付海苔などの原料に使うわけであるが、再乾燥した海苔は、3,600枚入りの箱のまま、5℃から10℃以内の低温倉庫に保管するが、上質海苔は−25℃程度の冷凍庫に保管することもある。

家庭では、そこまで厳重に保管する必要もないが、開封後は、チャック付きのビニール袋に買ったときに同封されていた乾燥剤と共に密封して、冷蔵庫に保管すればよい。
50枚を保存しようと思えば、冷凍室に入れておいた方が良いようだ。

海苔は水分を含むと紫色に変色して、味が落ちてしまう。
これはもう元に戻らないから、佃煮に炊くより方法がないようだ。(治)
2006.08.09掲載
◎おいしい海苔に多い「穴あき」

おいしい海苔の見分け方は非常に難しい。

最近は海苔の店頭販売が見られなくなり、
試食して買う機会がなくなってしまった。
海苔の専門業者は、産地の入札会で見本の海苔を焼き、味見をして買うことが多い。専門業者は、毎日海苔を見て、焼いて味見をしているから、ベテランになると、海苔を見ただけで、おいしい海苔を見分けることが出来る。
この数年来、海苔業者の買い付け内容を見ていると、初摘みの海苔を買う場合、海苔の表面に米粒が通るくらいの穴がある海苔で、濃い緑色に焼ける海苔を買う姿が増えている。

初摘みの海苔は、
細胞が軟らかく、摘み採って乾燥する際海苔芽が縮み
穴が空き易く
なる。
そして、抄き上りも、やや薄い海苔に仕上がる。通常、海苔の重量は、100枚で300gから320gに作り上げる。しかし、本当においしい海苔は、
300g以下で280g程度に抄き上がった
もの
に多い。

海苔に穴が空かないように作るようになったのは、海苔巻きのコンビニおにぎりが売れ始めてからである。中のご飯が見える海苔に巻いてあるおにぎりが売れ残る率が高いため、産地に穴の空かないような海苔作りが指示された。その結果、見た目の良さを追う海苔作りになり、産地で、海苔本来のおいしい海苔作りが出来なくなってしまった。

食べ物は、見た目の良さも大切かも知れないが、
最も大切なことは、産物の味を生かす育て方、作り方だと思うのだが。
大切なことが見失われるようになっては、味も素っ気もない食生活になりそうだ。(治)
2006.08.02掲載
◎おいしい海苔とは

小売店頭で試食できない海苔の味を見分けるのは至難の業である。
従来から、一般的においしい海苔の見分け方として、
「色が黒くて艶のあるもの」を
基準にするように
−といわれている。
確かに、一つの方法ではある。
しかし、それだけではない。
海苔の色艶は、4つの色素で表されるが、味の良い海苔の場合は、
赤味を帯びた黒さで、「赤黒い」と表現する漁家もいる。
海苔の色素だが、
@フィコシアニン=青い色。
Aクロロフィル=緑色。
Bカロチノイド=黄色。
Cフィコエリスリン=赤い色。
この4つの色素がほどよく配分されると、黒色に見える。

海苔は、海表面で養殖されているから、日光を良く浴びて、光合成を行いアミノ酸を体内に蓄積する。
その結果、フィコエリスリン(赤い色)が増えて、味のある海苔はやや赤味を帯びた色になる。
特に、支柱に海苔網をくくりつけて養殖する有明海の「支柱漁場」で、干満の差によって海苔網が空気中にさらされる養殖方法の海苔は、
赤味を帯びた海苔で、味のある海苔が多い。

海苔を焼くと、フィコエリスリンは熱で分解して見えなくなり、熱に強いクロロフィルが残って緑色になるが、おいしい海苔は、深い緑色になる。
最近は焼き海苔の市販品が増えているが、海苔巻きも焼海苔で巻いた方が、
酢飯の香りと良く合い、歯切れも良くおいしいように思う。(治)
2006.07.26掲載
◎韓・中国の輸入海苔入札終わる

平成18年度の海苔輸入割当枚数は、5億8,500万枚。

内訳は、韓国からの輸入割当枚数は、3億4,000万枚。中国からは、2億3,000万枚。
その他の国からは1,500万枚になっている。

昨年度は、全体で4億枚。1億8,500万枚の増加である。

この内、海苔の専門業者に割当てられた輸入枚数は3億3,700万枚(全体の57.6%)、内訳は、
韓国・1億8,700万枚。中国・1億5,000万枚。この分についての入札会が、5月18日、19日・韓国ソウル特別市。6月2日・中国江蘇省南通市で、それぞれ開かれた。

その結果、韓国海苔は、乾海苔・味付海苔を含めて83.3%が落札され、海苔中国海苔は、66%が落札された。いずれも、日本の海苔業者が示した入札価格では売り渡すことが出来ないとして、売買が成立しなかったものである。

輸入関税、手数料、運賃などを加味すると
日本産海苔と大きな価格差がなくなり
双方の妙味が薄れているようだ。(治)
2006.07.19掲載
◎平成17年度の海苔生産99億枚に

平成17年度(平成17年10月〜平成18年5月)の全国海苔生産数量がまとまった。
海苔の数量は枚数で表すが、
全国で99億5千万枚に達した。
昨年より約4億枚多い。

全国を地区ごとに見ると、
◇東日本地区(宮城県〜三重県)=21億3,942万枚(全国の22%)。
◇瀬戸内海地区(大阪府〜山口県、徳島県〜愛媛県)=26億9,014万枚(同27%)。
◇九州地区(宮崎県除く6県)=49億7,745万枚(同51%)である。

平成14年度以降は100億枚の生産枚数に達していない。海苔の需要低迷と消費市場で低価格の販売競争が続き、そのしわ寄せが産地価格の低迷につながり、海苔生産漁家が減少したことや、この2年ほど、瀬戸内海の生産状態が良くないことなどが主な原因になっている。

ただし、
今年の海苔は、全国的に草質が柔らかく、味の良いものが
多い。

その多くがギフト商品に使われているため一般の小売店頭では見かける機会も少ない。多くの消費者に美味しい海苔を味わってもらえるようになれば、産地も活気づき、より美味しい海苔作りに励みが出るのだが、消費市場の低価格による販売競争が、一般小売市場での上質品販売を難しくしているようだ。(治)
2005.11.18掲載
◎新海苔入札始まる

新海苔の入札が始まった。
全国で一番早く海苔摘みが始まる宮城県が、毎年トップを切って入札会を開く。全国から入札会参加権を持った海苔商社が集まって競争入札で買い付ける。
今年の宮城県の海苔は、海水に含まれる窒素分などの海苔の生長に必要な栄養塩が少なく生長が心配されたが、11月上旬の雨で空気中の窒素分が海中に注がれて、何とか質の良い海苔が増え始め、ほっとひと息といったところのようだ。
全国的に秋口から年末にかけての気温が高く、水温の下がり具合も遅くなっている。そのため、味の良い海苔が育つ水温の12℃から13℃程度まで下がるのが遅く、高水温の中で海苔も息苦しい環境で育っている。
水温が高く、海中に窒素やリン分が増えすぎるとプランクトンが増えて、赤潮が発生して、海苔が必要とする栄養分を横取りするため、海苔は栄養不足になって、黒い色が黄色になってしまう。

また、雨が多すぎると、河川からの流量も増え比重(塩分濃度)が下がり、海苔特有の障害が発生して、海苔の生長が阻害される。
海苔は、こうした環境の変化に耐えながら生長して、20センチ程度に伸びると摘み取られて、人の栄養源として食べられる。海苔には感謝しなければならない。

さて、
11月下旬から東京湾、伊勢湾、有明海で生産された新海苔の
入札
が始まる。瀬戸内海は、一足遅れて、12月から新海苔入札を行う。
写真は11月15日の宮城県産海苔の初入札会

まだ、海苔とっては不安定な海況が続きそうである 。
しかし、おいしい海苔に育って欲しい。また、新年の食卓に新海苔の香りが十分届けられるように、育って欲しいものだ。

(治)

2005.11.04掲載
◎新海苔の養殖始まる

有明海の新海苔種付けが終った。
これから、海苔芽が伸びた網を漁場一杯に広げながら張り込む作業が始まる。
それにしても、年々海水温が高く、今年も5日から16日にかけて始まった海苔種付け時期の有明海の水温は、5日の26℃から順次下がり16日には24℃台まで下がったが、それでも
平均水温に比べて2℃高くなっている。
水温が22から23℃位に種付けを始めて、20℃を下回る程度から海苔芽が伸び始めるとおいしい海苔が採れるということで、水温が高くなっているので、海苔の種付けの時期を遅らせてはどうか−
という声もある。
しかし、海苔の売れ行きが悪く、入札値段が安くなっているため、少しでも早く海苔摘みを始めて、生産金額を増やさなければならないという心理も働いて、なかなか、種付け時期を遅らせようという動きは見られない。同じ海域に海苔網を張りこんで養殖する漁業だけに、全体の足並が揃わなければならない。
海苔の種付け風景
写真=海苔の種付け風景(福岡有明海苔漁場)

今年も、高水温の中で、生育を気にしながらの種付けになったが、水温低下が遅いだけに、生育の先行きを心配する声もある。うまく育ってくれることを祈るのみだ。

それにしても、気候の温暖化を作り出したのは便利さを追い求めた人間社会によるところが大きいだけに、おいしい海苔作りの為にも、生活のあり方を考え直さなければならないようだ。

(治)

2005.06.28掲載
◎輸入が始まった中国海苔

日本の消費市場に、史上初めて中国産養殖海苔がお目見えすることになった。
日本では、国内海苔養殖漁業の保護育成のため、海苔の輸入には、国の許可が必要で、輸入相手国は韓国に限られていた(輸入割当制度)。
毎年輸入枚数を日韓漁業交渉で取り決め、国から輸入のための外貨割当てを受ける必要がある。これに対して、中国から「韓国だけに輸入を認めているのは、世界貿易機関(WTO)の協約違反ではないか」と強い要求があり、今年から、輸入割当制度を維持しながら、輸入相手国の制限をなくすことにして、中国海苔の輸入も認めることになった。
その初入札会が6月2日、中国・江蘇省連雲港市にある「国際海苔取引所」で行われた(写真)。
江蘇省の沿岸では
中国の養殖海苔の約90%が生産されており、生産設備の多くが日本製製造機械を設置し、日本と同じような養殖方法である。
国際海苔取引所

また、海苔の質も有明海で生産される海苔に似ており、柔らかくて味のあるものも生産されている。生産技術も良くなって、安全な食品作りの基準を作って輸出に力を入れる方向で動いている。


今年の中国海苔輸入枚数は、8,020万枚。
初入札会には日本から48社が参加した。日本の商社の評価は「想像より質の良い海苔が生産されている」ということであった。
入札された海苔はすでに日本に運ばれ始めているが、
7月に初めには、海苔業界初の「中国産」と明記した焼海苔と味付け海苔が小売店頭に並ぶことになっている。
業界の先頭を切って発売する加工海苔メーカーでは
「質の良い中国海苔で日本の消費者の評価を得たい」と語っている。
日本の海苔産地は「中国産海苔」への消費者の関心度に注目している。(治)


2005.03.21掲載
◎変動激しい有明海の海苔養殖

今年の冬は、12月下旬から突然訪れ、2月に入って全国に雪を振り撒く、変な冬だった。
九州も例年にない雪の多い冬で、凍える寒さは感じませんが、日照率の少ない冬になっている。
 これが、今年の有明海の海苔生産に良い影響を与え、九州地区の海苔生産枚数は、3月15日現在で40億7,317万枚に達し、
有明海の海苔養殖史上最高の生産枚数・45億枚を達成しそうである。
昨年同期の実績に比べると、5億5,937万枚多くなっている。昨年のこの時期には、有明海は海苔に必要な海の中の栄養塩が少なく、海苔生産はほぼ終わりの状態であった。
 ところが、今年は2月中旬から有明海沿岸では、くもり日和が多く、雨や雪が2〜3日ごとに繰り返す
日が続き、水温も10℃以下の日が多かった。
こうした天候が有明海に適当な栄養塩を与え、プランクトンの発生が少なく、海苔の生長を妨げる海苔
特有の病害の発生、拡大を防ぎ、順調な海苔の生育を助けたようである。
 その結果、有明海での海苔養殖史上最高の生産量に達しそうな状態が目前に迫っている。
45億枚というと、昭和41年(31億枚)から同45年(55億枚)頃の全国総生産枚数に匹敵する。
有明海の面積は1,700kuで、その内、海苔養殖の面積は約270kuで
約16%に当たる。
 ところが、有明海は全国一の不安定な海苔産地でもある。通常年で4億枚から5億枚の変動差がある。大きい時は10億枚以上になる。諫早湾の干拓との関連で特に大きな話題になった平成12年度
(24億枚)は、大不作で同11年度(41億枚)の13億枚減、ところが翌年の13年度(44億枚)は
20億枚増という状態である。
天候や海のわずかな変化が大きく左右するのが海苔養殖といえるようだ。(治)

2005.01.18掲載
◎「円満草」と「ばくち草」

海苔は、気象や海況、そして、作る人によって、出来不出来が大きく左右される海藻である。
つまり、
非常に繊細な神経の持ち主であるといえよう。それだけに、おいいしい海苔を
作る海苔師にとって、海苔作りに生きがいを感じされるものがあるようだ。
 水温・12℃、比重・23、栄養塩・7マイクロ(100ガンマ)という恵まれた海況の中で、1日4時間ほど淡い冬の日差しに当たり、柔らかな北風に当たりながら、海水の中で
「ひねもすのたりのたりかな…」の生活を過ごすことが出来れば、色艶が良く、味のある海苔に生長してくれる。
この時が豊作である。
 しかし、この環境が崩れると、海苔特有の体調変化をきたして、色がさめたり、味をなくして、途中で
生長が止まってしまう。
これが不作である。
このような、豊・不作の繰り返しに海苔師は、何度も泣かされてきた。
そこで、豊・不作の激しい海苔養殖を指して
「ばくち草」ということもある。
 しかし、不作の中でも、寒い冬の海の中で手をかけて育ててやると、数は少ないが、おいしい海苔に
育ってくれる。また、摘み採った海苔を1枚1枚丹念に仕上げてやると、姿かたちの良い海苔になって
くれる。
 この仕上げの時も、家族総出の作業で、みんなが海苔をいたわる気持で接すると、十分それに応えてくれると海苔師はいう。「海苔にいたわりが伝わるようにするには、家庭が円満でなければならない。
おいしくて、姿かたちの良い海苔は、高値で売れる」。それが、また、家庭円満につながる−という。
つまり、円満な家庭で作られた海苔は、おいしくて価値のあるものにつながるから
「円満草」
ということになる。
海苔作りも大変である。(治)

2004.12.09掲載
◎上質海苔の需要を待つ「海苔師たち」

先に、ポーランドのテレビ取材陣が千葉県の海苔生産の取材を掲載した。
海苔が日本の食文化に与える影響について取材し、日本文化紹介シリーズの一つに取り上げるという
ことであった。ポーランドでも回転寿司が増えて海苔の需要は増えているという。
しかし、その海苔の多くが中国産海苔である。
今、海苔の生産国は日本ばかりではない。韓国の生産の歴史は古く、65億枚の生産力を持っている。中国も10年程前から、日本の海苔品種と同じで、日本の養殖方式を取り入れた生産が行なわれている。その生産量は、約20億枚に達している。
日本は、海苔生産の先進国だが、国内で生産された約100億枚の
海苔のほとんどを国内で消費している。

輸出量は約2億枚程度で、国内消費量は100億枚弱であるから、供給過剰の状態が続いている。
それにもかかわらず、韓国から約2億4,000万枚(平成16年実績)が輸入されている。
さらに、2005年から中国の海苔が輸入されることが決まった。この数量はまだ決っていない。

 供給過剰で国内の産地価格は、この20年間で約17%安くなっている。輸入が増えれば、さらに、
下がるのではないかと国内の海苔養殖漁家は心配している。韓国も中国も日本に比べると生産コスト
は低く、価格面ではとても太刀打ちできない。
しかし、味の良さでは、輸入海苔より優っており、その部分をもっと多くの人に知ってもらい、国産品の
良さを訴えなければならないが、まだ十分とは言えない。
 韓国、中国から日本市場に進出しているにもかかわらず、
日本の海苔の海外市場進出は微々たるものである。
海苔は低カロリーで食物繊維が多く、多くのミネラルを含んだ健康食品として海外でも注目される食品
の一つで、寿司屋も、回転すしも増えているから、もっと積極的に海外市場に進出しなければならないが、日本の海苔産業界は、国内需要に支えられ温存された永年の流通システムのぬるま湯に浸ってきたため、なかなか抜けられないのが現状である。
 こうした、体質から抜け出すには世態が代わらなければ無理のようだ。
世界一の質と生産量を誇る日本の海苔産業界は、世界の海苔生産国のリーダーとしての自覚を持ち、輸入海苔に対する防戦体制だけでなく、
海外市場を開拓する気概を早く身に付けて欲しい
ものである。(治)

2004.11.23掲載
◎「海苔は国際食品だ」

先に、ポーランドのテレビ取材陣が千葉県の海苔生産の取材を掲載した。
海苔が日本の食文化に与える影響について取材し、日本文化紹介シリーズの一つに取り上げるという
ことであった。ポーランドでも回転寿司が増えて海苔の需要は増えているという。
しかし、その海苔の多くが中国産海苔である。
今、海苔の生産国は日本ばかりではない。韓国の生産の歴史は古く、65億枚の生産力を持っている。中国も10年程前から、日本の海苔品種と同じで、日本の養殖方式を取り入れた生産が行なわれている。その生産量は、約20億枚に達している。
日本は、海苔生産の先進国だが、国内で生産された約100億枚の海苔の
ほとんどを国内で消費している。

輸出量は約2億枚程度で、国内消費量は100億枚弱であるから、供給過剰の状態が続いている。
それにもかかわらず、韓国から約2億4,000万枚(平成16年実績)が輸入されている。
さらに、2005年から中国の海苔が輸入されることが決まった。この数量はまだ決っていない。

 供給過剰で国内の産地価格は、この20年間で約17%安くなっている。輸入が増えれば、さらに、
下がるのではないかと国内の海苔養殖漁家は心配している。韓国も中国も日本に比べると生産コストは低く、価格面ではとても太刀打ちできない。
しかし、味の良さでは、輸入海苔より優っており、その部分をもっと多くの人に知ってもらい、国産品の
良さを訴えなければならないが、まだ十分とは言えない。
 韓国、中国から日本市場に進出しているにもかかわらず、日本の海苔の海外市場進出は微々たるものである。
海苔は低カロリーで食物繊維が多く、多くのミネラルを含んだ健康食品として海外でも注目される食品の一つで、寿司屋も、回転すしも増えているから、もっと積極的に海外市場に進出しなければならないが、日本の海苔産業界は、国内需要に支えられ温存された永年の流通システムのぬるま湯に浸ってきた
ため、なかなか、抜けられないのが現状である。
 こうした、体質から抜け出すには世態が代わらなければ無理のようだ。
世界一の質と生産量を誇る日本の海苔産業界は、世界の海苔生産国のリーダーとしての自覚を持ち、輸入海苔に対する防戦体制だけでなく、海外市場を開拓する気概を早く身に付けて欲しいものである。(治)

2004.11.04掲載
◎「漁業者も雑木植林で治山治水!」

今年の台風被害はこれまでになく大きなものになっている。
河川の氾濫で水没した家屋や川のようになった道路を見ると、「いったい、どうなっているんだ…」と
驚くばかりである。
テレビの海外ニュースで見る大雨や台風の被害と同じ場面が繰り広げられている。
この被害で犠牲になった人が高齢者に多いというのも「なぜだ…」のひとつである。
「国を治める基本は、治山治水である」と言われる。
こういう被害を見るたびに、この言葉を思い浮かべるが、永遠の課題でもある。
いつの台風でも、海に流れ込んでくる
「流木」の多さには驚く。今回も18号台風では、愛知県の知多半島の野間と言うところから半島の先端にかけの西部地区一帯におびただしい流木が押し寄せた。
また、22号では、東京湾の木更津一帯に流木が押し寄せた。台風の進路に当たった湾岸では、大量の流木やゴミが押し寄せる。陸上の台風被害と同じように海上の被害も大きい。大雨による河川の洪水で、普段、河川上流や河川敷の藪に不法投棄されていた家電品、大型ゴミがきれいに掃除されて海まで押し流されてくる。
まさに、
海が掃き溜め状態になってしまう。大雨、台風の際は、いつもこの繰り返しである。
この数年、漁業者が地域の山を借りて、雑木林を作る運動を進めている。杉や檜の植林は進んだが、
山の際まで杉や檜が植えられて、山裾に雑木林が見られなくなった。その分保水力がなくなっている訳で、何とか保水力のある樹木を植え、それが河川の氾濫を少しでも鎮める役目を果たしてくれることを期待したいものである。(治)

2004.9.13掲載
◎「海きれいにして、海苔育たず…?」

 今年はどうやら台風の当たり年のようである。
この台風、地球上の自然の摂理でどうしょうもないが、生活のリズムを乱すいろいろな被害を与えるため、印象は良くない。しかし、意外な好影響をもたらすことがある。

 このところ、全国的に海苔産地の海況が思わしくなく、海苔の生産状況が良くない。
その大きな原因の一つに、最近の海には、美味しい海苔の生育に必要な栄養分が少なくなっている
ことが挙げられている。
海苔の栄養分は、海中の窒素、リンなどであるが、その量が少なくなっていると言うことである。
また、環境についてみんなの関心が高まるとともに、海がきれいになって、透明度が高くなって、見た目は海がきれいになりつつある。
 下水処理が整い始め、河川から流れる水はきれいになっているが、海苔が欲しがっている栄養分は、少なくなっているようだ。これは、海苔漁業者の多くの人が感じていることでもある。
しかし、環境問題についての一般的な現在の風潮の中では、「海がきれいになり過ぎては、おいしい
海苔は採れにくくなるんですが…」とは、言えない。

 そこで、期待したいのが、
台風による海の引っ掻き回しである。
大荒れで海の底から引っ掻き回して、海底の干潟の中に埋もれている窒素やリンを海中に拡散してくれれば、10月から始まる海苔養殖にもタイミングが良く、全国の皆様に「おいしい海苔」を提供することができるのだが…と、密かに思うことがある。

でも、「海はほどほどにきれいにして下さい」とか「9月の台風は有り難い」などとは、心に思っていても、言えるものではありませんよ、ネッ。(治)